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2004.04.20

面とペルソナ

イラク人質問題が一段落(?)した感があります。
三人の人質の方が安全に戻って来られて何よりでした。
しかし、この事件のおかげ(?)で国際問題をはじめとして、
いろんなことが浮上しました。
忘れていた宿題を思い出して
慌てている夏休み終わり間近の子どもたちのよう。

そんな中で、今日は「匿名か実名か」について考えてみたいと思いました。
この問題も、今回はいろんなサイトやブログで取りざたされていました。
私の知人は、この問題が起きる以前から、「ネット上での実名、匿名」について深い洞察を加えた記事を書いています。
私はこの問題がマスコミやネットでバンバン流れている時、
なぜかいつも和辻哲郎「面とペルソナ」を思い出していました。
と、いっても本そのものを読んだわけじゃなくて、学生時代「国語」の教科書に載っていたものです。
その内容もさることながら
写真が私にはかなり強烈な印象でした。
写真は「般若」の面だったのです。
すべての感情(喜怒哀楽)を抜き去り、
「顔」そのものだけがある「般若の面」。
しかし、そこから流れてくる強烈なエネルギーは、
「素顔」よりも大きい。
喜びが、怒りが、哀しみが、そして楽しみ。さらには憎しみさえも。
まだ、若かった私は「怖い」と思いました。
(だからこそ、覚えているのでしょう、、、)
ペルソナにしてもそうです。
「人格」という意味と同時に
「仮面」という意味も持っている「ペルソナ」という言葉。
オペラ座の怪人がつけているのがペルソナです。
西洋では会いたくない人に、どうしても会わなければならない時、
「ペルソナ」を付けた歴史があるそうです。
ここからは和辻先生の本来の話からそれてきます。
(面とペルソナさん、お疲れさま)

実名か匿名かも同じような感がしました。
つまり、匿名の方がより強い感情、エネルギーを放出しているような感がしました。
なぜなら、匿名は「別の人格」になるからです。
私たちの中にはいろんな人格がいて、
そのバランスで、どうにか生きているわけです。
(有名なダニエル・キイスの本にも多重人格が出てきたりしますが、、、)
匿名という面を被ると、隠れていた人格が出てくるだけ、
あるいは出やすいだけなのです。
イラクの人質家族の方へ「匿名で嫌がらせをした人たち」への、
さらに「批判」として
「普段の自分の中での抑圧されている感情が、
屈折してより弱いものへの「いじめ」として表れている」
と、「素顔」のままのコメンテーターがテレビで言っていました。
私はこれを聞きながら、
「それって、今度は匿名で意見を言っている人へのイジメだ〜〜〜」
と、逆にひねくれてとれないこともないと、思ったりしました。
確かに、行き過ぎた「匿名諸君」は問題があります。
これは私も認めていません。
とくに言葉の暴力は、
言われている当事者もそうですが、
聞いたり、見ている人も「不愉快」になります。
「どうせ面を被るなら、もうちょっと素敵な知的な面を被れよな〜」
なんて思うわけですが。
しかし、一般の匿名の方は「真剣」に考えて、
なおかつ自分の意見に力を持たすために、
匿名という面を被っているわけです。
あるコメンテーターが言いました。
「自分たちがイラクにも行っていないで、
人質になった人のことを、とやかく言うな」って。
もちろん、その人は善意で発言しているのです。
行き過ぎた「匿名諸君」への苦言を呈したわけです。
私はそれを聞いてて、ちょっと皮肉な意見。
「自分がやらないことは何も言っちゃいけないのか、、、」
と、思いました。
それだったら、だれも言えない。

では、私個人は「匿名」についてどの様に思っているかというと
「必要」
だと思います。
匿名という面を被ることで、
自分自身の人格を自分で知ることができるから。
「へぇ〜〜私ってこんなこと考えていたんだ、、」
なんて新しい自分と出会えたら楽しいとは思いませんか??
ただ、それは自分においてのみ
自己を知りうる手段の一つだと思います。
本当に自分の主張や意見を相手に伝えたいときは
「素顔」でないと、
相手は信用しないから、、、
実際、面やペルソナを付けている人と話すのは、ちょっと警戒しますよね。

面を付けたり、外したり、
そう、サングラスや素敵なカツラをつけるみたいに
(サスケはず〜〜と面を被っている)
実名や匿名を上手に使い分けながら
自分と向き合うことができる「ネット」はやはり優れものなのでしょか、、、
同時、自分の生活圏内では絶対に出会うことのない人たちとの出会いも
ある世界を、上手に使って楽しまなければ「うそ」だと私は思います。
よく見かける掲示板での「討論」。
初めはいいのですが、次第に熱が入って
罵しりあいになったりする場合があります。
もし、ここに宮沢賢治がいたら、そんな人たちに言うだろうな。
「つまらないからやめろ」と。

今、私たちは「ネット」の黎明期に立たされているのでしょうか、、、
機械に試されている人間の知恵。
これは、オモシロくなりそうな予感。
どうせ、するなら、
お面でも素顔でも
楽しくやりたいものです、、、


〜「能すみし面の衰へ暮の秋」 高浜虚子〜

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コメント

 勝手にトラックバック送ったにもかかわらず、コメントありがとうございました。ご紹介いただいた記事も読ませていただきました。

 私もいままで自分のblogで数回、ネット上での匿名攻撃について書きました。匿名はあっても構わないという点では私も同じ意見です。不幸なことに匿名でやっと人格が解放され自由になる人もいるでしょうからね。
 同様に匿名という「ペルソナ」に隠れ、手の届かない高みから悪罵を投げつける行為は許されないと思っています。
 私はハンドルネームという「ペルソナ」に私独自のペイントを施していきたいと思っています。見る人が見れば本人が誰なのかすぐに明らかになるような、お約束のような匿名性です。

 私も教育関係といえばそういう仕事ですので、教育や子供たちについてまたお話できればと思っています。

投稿: Rough Tone | 2004.04.21 05:14

営業の現場では「政治と野球と宗教の話はするな」と言われます。その意味で凄く現実的でせせこましい話ですが、ネット上で無茶苦茶激しい論争した人が得意先の部長だったりする可能性もあって、商売上の実益を考えて私は匿名も支持します。仕事を棒に振ってでも…というのは普通は無理ですので。私の場合、同姓同名というのがありえない名前なので名刺見られた瞬間に「あ、貴様は!」となる可能性がありますから。
ただ、匿名をいい事に犯罪に近いような誹謗、中傷、侮辱、悪質なジョークを書き込む輩はなんとかしたいと。どうすれば解決できるかは難しいですけどね。公衆便所の落書きも取り締まりはできないし。

投稿: ハイハイパパ | 2004.04.21 08:37

Rough Tone さん、ハイハイパパ さん。
書き込み有り難うございます。
「匿名、実名」というこの問題って、
やはり情報社会が生んだ一つのテーマなのでしょうね。
私たちは現実の社会と、マトリックスの世界とを
上手に使い分け、考えていかないといけない時代に来たんだな、、、と思います。
私たち自身が「機械」に試されているのかもしれませんね。
また、いろいろご意見、お聞かせください。
一緒に考えていけたら嬉しいですよね。

投稿: せとともこ | 2004.04.21 11:09

TB有り難う御座います。
ここでの話題について云えば、私は実名・匿名の二分論ではなく、間にもう一つ通称を入れて考えています。
どこまでが匿名となるか、どこまでが通り名であるか。これは責任の範囲の問題でしょう。
私はネット上は隅田清次郎若しくは隅田でほぼ統一しています。
本名を名乗ってもいいですが、そちらは読めない人、入力できない人のことを考慮しなければならない珍名なのと、本名であるという相手への威圧を避けることを主眼において隅田と名乗っています。
年齢も職業も住所もさらしている以上、匿名であることの利点はこのハンドル名ではほとんど無いと思います。
ただ、リアルの私とネット上の隅田との間には少し違いがあります。これは匿名だからではなく、場所と相手による使い分けであり、客の前と同僚の前、同窓生の前でみせる顔は実名ですがもっと極端に違います。実名だから全くの素顔だとは思えません。
”ハンドル名ごとに発言傾向の固定された個性”という言い方は、幾つかのハンドル名を使い分ける人も念頭において、固定されたハンドル名を使うことによる責任意識とそこから産まれる信用、人間的な成長を認めた表現です。そういう名前は匿名とは区別したいです。
ネット上で匿名であることの意義は認めますが、コテハン・捨てハン両方でハンドル名の使い分けができるようにならないと、匿名でしか発言できない人間になってしまいますし、せっかくの新しいコミュニケーションの場で友人を増やせない、コミュニケーションができない孤独な生活を送ってしまいます。
私のblogのコメント欄がメルアド必須なのは別にアドレスを知りたいわけではなく、コミュニケーションしましょうよという問いかけです。

投稿: 隅田清次郎 | 2004.12.03 04:25

隅田清次郎 さん。
こんにちは。
コメント有り難うございます。
こちらこそ、いつもトラックバック頂いていること、とても嬉しく思っています。
さて、今回、トラックバックさせて頂いた記事は、ちょっと古くて、自分でも悩んだのですが、隅田さんに読んでいただいて、ご意見聞きたいと思ったのです。あの記事の頃は、人質事件の頃で、「匿名」の嫌がらせが多いときでした。ネットでも多くの方が「匿名、実名」について書かれていた頃です。
そいうわけで、あの記事はチョット古いのですが、あなたのブログで「名前」を拝見したのでトラバしました。
私は、隅田さんから頂いた今回のコメント、賛成です。本当にその通りでもあるし、そのように楽しんでいきたいと思っています。
これからも、楽しく意見交換していきましょうね。どうぞよろしく(*^_^*)

投稿: せとともこ | 2004.12.03 15:58

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