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2004.05.06

人間のしるし

ナチスの占領下にあって、
パリで非合法の文学新聞「フランス文学」を発行しつづけた
クロード・モルガンの本「人間のしるし」。
この本は
彼がドイツの収容所で捕虜となった1941年から、
その体験をつづった手記です。
モルガンはこの中で、
人間に対しての深い洞察を加えながら、
「人間というものは、愛すべきものである、、、」
と淡々と、しかも熱く
書き綴っています。
フランス・レジスタンスの特徴の一つは、
ファシズムに対しての抵抗も
もちろんですが、「文化のため、文学のため、小説のため、詩
のため」に多くの知識人が結集したというところです。
まさに「言論の自由」を求めて生命さえかけたのです。
モルガンは自らの体験を通して
「戦争とは人間の尊厳を奪うものである」
と言っています。
本来は自由で闊達で、
楽天的で陽気な人間たちをして、
その尊厳を奪い、
貶めていく「戦争」というもの本質をズバリ書いています。

訳者の石川湧さんは後書きで次のように書かれています。
「ユマニテ共通の敵ナチ主義の亡霊が、
衣装を着替えて再現する気配のただならぬ今、
モルガンの果たす役割はますます大きいものがあるばかりでなく、
われわれの日本においても、
かれらの態度に学ぶべきところがすくなくはあるまい。」と。
この文を書いたのはなんと1951年、今から50年以上前のことです。

だが、しかし、
いま、私たちがむきあっている現実はさらに深刻で深い。
2004年の世界にはいろんな亡霊が跳梁跋扈している。
ある時はやさしく、みみもとで囁き、
またある時はむき出しにした欲望を振り回して、
「戦争」という亡霊が私たち人間の尊厳を少しづつ蝕んでいる、、、

そんな気がしてなりません。

この連休に改めて
「人間のしるし」を本棚から取り出してみました。

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コメント

瀬戸さん、こんにちは。初めてコメントします。
ずいぶん古い記事へのコメントで申し訳ないですが・・・。

「人間のしるし」という検索ワードで、ここへたどり着きました。
この本、学生の頃、私も愛読していました。
この本の愛読者に絶対悪い人はいないと思います。

瀬戸さんの他のブログも拝見しました。ずいぶんと頑張って
おられますね。
私は退職してかなり時間が経ちました。これからも、時々、
お邪魔します。
突然、失礼しました。では。

投稿: 墓石さん | 2013.09.27 12:14

墓石さん。
初めまして。
コメント有り難うございます。
お返事遅くなりごめんなさい。
ちょっと体調を崩していて、この頃ブログの記事も書けなかったのです。

少しずつ日常を戻して行こうと思っていますので、
ゆっくりとブログにも向き合いたいと思っています。
この頃の世の流れを見ながらこれで良いのかと考える事ばかりですが、、、
さてさて。


またいろいろとご意見お聞かせ下さいね。
私も墓石さんのブログ時々拝見させて頂きますね。

ではこれからも宜しくお願い致します。

投稿: せとともこ | 2013.09.30 14:14

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» 普通の市民が悪魔にかわるとき [Passing Strangers]
 8日は午後から週例のバドミントンにでかけた。今年度からわりと本格的な練習に入っ [続きを読む]

受信: 2004.05.10 03:16

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