酒井順子〜負け犬の遠吠え〜が示すことは?
この本、
「負け犬の遠吠え」
酒井順子著 講○社発行
ウラ表紙を閉じて、
一番目に思ったこと、
「しまった〜〜〜。
出版社の罠にヤスヤスと、
はまった〜〜〜〜」
と、いうことです。
イヤァ・・・やられたな。
編集者のニンマリが目に浮かびます。
「立ち読み」で読んだ以上のことは
何も書かれていませんでした。
〜そこで、酒井さん。
まぁ、私も買ったので、その分(1400円)だけは、
ここで、言わせてくださいね。〜〜〜
「酒井さんはサカイさんをやっているの、
大変だろうな、、、」
なんて、酒井さんに変に同情。
彼女は、
今まで「ノリ」で軽くエッセイを書いて、
「読ませてなんぼ」の世界にいました。
確かに、私も彼女の書く物は、
「軽くて、オモシロくて」
フッと、笑って読んでいました。
人の心をとらえるキャッチコピーなんかは、
さすがに
広告代理店で鍛えた物があるのか、
上手です。
そんな彼女が、
「負け犬〜〜〜」を書いたのですが、
これについても、
一回こっきりぐらいなら、
笑えて読めるのですが、
単行本になって、
ず〜〜と読者を引っ張っていくには、
「経験、知恵、知識、世界観」が浅薄なのです。
(酒井さん、ちょっとキツイ言い方だったらゴメン。)
読者である私としたら、
やはり、
田中美津さんのように、
堂々とジェンダーフリーを唱えつつ、
その歴史、社会的背景、今後の展望など
論陣を張って、
さらに有名な
「女性は便所か?」
というショッキング発言で、
当時の社会の一つを牽引したもの
(賛否両論はあるものの)
を期待していたのですが、、、
実際に、
本をひもといてみると、
ある年齢以上の女性を負け犬と称して、
その「生態」を自分の体験を中心に、
オモシロく(?)描いているつもりのようですが、、、
そもそも、
酒井さんが、
カテゴリーに分けている
勝ち犬、負け犬の洞察が、
粗くて、雑。
彼女が称する勝ち犬という物が、
どんなものか、彼女自身が知らないので、
一方的な考察になるのは仕方がないとしても、、、
「人」の評価が、
「勝ち、負け」というところで言及しているから、
対象全て(いずれの立場でも)に対して。優しくない。
と、思いました。
最初のスタートがそんなだから、
最後まで、
同じことをクドクドと、
愚にも付かないことを言っているだけで、
何も結論が出てこない。
あとがきに、
「世の中にはイロイロな人があるということを、
知ってもらいたかった、、、」
なんてことで、
チャンチャン。
オイオイ。
これじゃ、泣くになけないよ〜〜〜(遠吠えワンワン)
「人生いろいろ」なんて、
どこかの国の首相に似てないか、、、
最後まで読んだのに、、、
もっと、期待していたのに。
しかし、
考えてみたら、
酒井さんも、
本当は自分でビックリしているんじゃないかな??
なぜなら、
彼女も出版社の戦略に組み込まれた
一人だから。
「売らんかな」主義の出版社の編集者の顔が、
手に取るように思い浮かびます。
ボロボロの雑巾、もう、どんなに絞っても、
一滴もでないような「知恵」を、
さらに絞り出させて、著者に書かせるのです。
(それこそが編集者の真骨頂。腕のみせどころ)
そして、そして、
書かせたら
後は、センセイーショナルな売り出しコピーを、
考えて、
世論をミスリードしていく。(この場合は)
これが、
出版社のやり方なのだ!!!
(どこでも、大手出版社の仕事だから、、、)
酒井さん、
貴女には怒っていないけれど、
(今まで通りの軽いノリで
これからも書いていて下さい。)
出版社のやり方に腹を立て、
なおかつ、
それにはまった自分に、
腹を立てている私なのです。
そして、そんな自分を棚にあげつつ、
酒井さんの本が一連の社会現象を起こした背景は、
かなり深刻に受け止めています。
この本が読まれ、
賛否両論はありつつも、
一つの社会現象になったと、いう意味は、
「家庭」が一つの社会単位ではなくなりつつ
あることだと思います。
結婚を望まない、
結婚をしない人たちが増えている、
と言うことは、
政治の貧困の一つのインジケータだと思います。
日本の社会の病理は、
グ〜〜〜ンと深いところに潜んでいるのでしょうか?
私たちが本来考えるべきことは、
「負け犬、勝ち犬」なんて表面のことではなくて、
もっと本質的な、
社会の仕組みを考え、論ずるべきではないでしょうか?
ややもすれば、
言葉の持つ力のみに振り回されそうな
自分をかいま見たという点では、
社会の病理をえぐり出したと言う意味では、
酒井順子さん、出版社には
「有り難う!!」
と、思いながら、
なお問題は深まった感がしている私です。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
鋭い視点ですね。。。
投稿: cheb153 | 2004.06.24 01:21
はじめまして。Primeraと申します。若干辛らつな意見、楽しく拝読しました。確かに負け犬現象は、今の日本の経済、社会現象の一つのあわられであって、その一部だけを取り出して論ずるとどうしても局所的な議論になりがちだと思います。
でも、男性の側からすると、常々負け犬の弁というのを聞いてみたいと思っていたので、興味深く読みました。
酒井さんの本はもっと情緒的に流れた書き方なのかなと思って読んだので、意外に論理的・客観的だと思ったのですが。
Primera
投稿: primera | 2004.06.24 01:27
私も本屋で斜めに読んだにすぎないんですが。それなりにおもしろかったです。
古典的なジェンダーフリーっていうのは、生身の女にはしんどすぎるんじゃないんですか。そこんとこは、ともこさんだって、わかってるんでしょ。
だから、結婚しない、子供を生まないという消極方法で、「女の仕事」を捨てるということが行われている。それはそれで私個人としてはよいとおもうんですが、そうやって「楽をする女」へのいまだに女の仕事の重荷をしょっているルサンチマンをかわすために、先に「ああ、どーせ私たちは負け犬ですよ」といってしまおう、ということだよね。いいんじゃないの。
でもさ、この「負け犬」という言葉だけが、独り歩きして、結婚しない女への蔑称として定着してしまったら、いやだなあ。
追記
>>そうやって「楽をする女」へのいまだに女の仕事の重荷をしょっているルサンチマンをかわすために、
「そうやって「楽をする女」への、いまだに女の仕事を重荷としてしょっている女たちからのルサンチマンをかわすために」でした。
ごめん。
投稿: みずのようこ | 2004.06.24 11:06
cheb153 さん。
primeraさん。
おはようございます。
書き込み有り難うございます。
cheb153さん。
酒井さんの記事、コメント読ませていただきました。
あの様な記事は知らなかったので、
紹介、有り難うございます。
仕掛人である酒井さん自身が、これをきっかけに
さらに成長していくような嬉しい予感がしました。
次に書く物が、どんなものか、とても楽しみです。
なお、実家にはかわいいチワワが二匹いるのです。
兄たち夫婦に、ホームページの紹介をしておきますね。(*^_^*)
primeraさん。
男性の視点というのは、また違うのでしょうねぇ。
確かに酒井さんの本は、
「カラッ」としていて、
ケラケラと笑いながら
自分の立場を受け入れているので、
私も個人的には、彼女の書く物は評価しています。
ただ、コラムにも書いたように、
一回限りの内容なら笑えるのですが、
単行本として、その「テーマ」で書き綴るには、
考察は甘い。
「勝ち犬」と称している既婚女性が、
「その人生の岐路」で何も考えずに唯々諾々と、
「結婚」を選んでいった、、、
ように、本文が進んでいくわけです。
しかし、それは、あまりに想像力が欠如していると思います。
また、未婚女性の捉え方も一面的なように思うのですが、、、
これは、
本来の彼女の守備範囲(エッセー、コラム)の枠を越
え、社会的評価が一人歩きしたのではないかと思うのです。
男性はこの本を読まれて、
どの様に思われたか、
興味があります。
また、男性のご意見もお聞かせください。
これからもよろしくお願いいたします。
では。
投稿: せとともこ | 2004.06.24 11:15
はじめまして。トラックバックをありがとうございました。
この本、日本から取り寄せて読もうかどうかと迷っていましたが、どうやらその必要なさそうですね(笑)
結婚をしない人が増える=社会の病理
うむむぅ・・・
「病理」というと、やっぱり人間の「正しい」「健康的な」生き方というのが前提とされているようで・・・(^_^;)
でも、瀬戸さんがおっしゃるように、もっと大きな視点で、社会構造の変化という点からこの「晩婚化・非婚化」の趨勢を見る必要があるっていうのには同感です。
投稿: エル | 2004.06.26 01:20
エルさん。
書き込みどうもありがとうございます。
エルさんのご活躍、日本からお祈りしています。
さて、頂いたコメント。
「病理〜〜〜〜」については、
私が書きたかった事、伝えたいことは、
「既婚、未婚」云々に関してと言うより、
「社会が当然担わなければならない分野の立ち遅れによる、病理」
例えば、保育、教育環境、情勢の職場進出、などいろんな事についてだったのです。
言葉不足でゴメンナサイ。
ご指摘いただいて自分の言葉足らずに気がつきました、、、有り難うございます。
エルさんのサイト、また伺います。
頑張っている女性がいることは、
私には大きな力付けです!!
これからもよろしくお願いいたします。
では、、、
お元気で。
投稿: せとともこ | 2004.06.27 17:46
はじめまして。
負け犬の遠吠え読んだあと検索したらこちらのサイトにぶつかりました。負け犬を地でいく30歳です。
負けを称する余裕があって、痛快じゃないですか。負け犬の遠吠え。自分を笑う、自分を落とすって、精神的な余裕がないとできないことですから。やってくれた!アリガトウって感じです。
酒井さん自身はいつもどおりの痛快辛口エッセイで書かれたつもりだと思います。それを「経験、知恵、知識、世界観」が浅薄」とは辛口すぎでは?勝ち負けの分け方が粗雑とあるけれど、それも彼女なりのユーモアだと思います。
酒井さん自身はテーマがひとり歩きしただけでいつもどおりのスタンスなのに、周りが勝手に「浅薄」だとか「負け」だとか、社会情勢に過剰反応するとちょっと白けた感じ。いつもどおりの辛口のエンターテイメントエッセイとしてとらえるには、センセーショナルすぎるのかな、タイトルが。
未婚も、既婚も子ありも子なしもみんな負けや悩みをかかえて、それでも元気になんとか、暮らしているんです。それでいーじゃないの、この本に関しては。といろんなところの論争を見て思ってしまいました。エッセイまで真剣に捉えていると息がつまっちゃうような気がするのは私だけでしょうか?
この場を借りてひとこといわせてもらちゃってすみません。
この場にそぐわないようでしたら、コメント消してくださいね。
投稿: みゅん | 2004.09.15 00:46
みゅんさん。
おはようございます。
書き込み有り難うございました。
みゅんさんのご意見、とてもよくわかります。
私も酒井さんは、好きです。
軽快で、なおかつ本質をズバリとついてきます。
またクロワッサンなどの雑誌で拝見する酒井さんは、
とてもカワイイ。
そうなんです。
だから、酒井さんのいつも通りの辛口エッセィとしての「負け犬〜〜〜」については、私もみゅんさんと同意見です。
むしろ、騒いでいる世間が、ちょっと?と思ったのです。
ある意味、「社会的な現象」とまで言われた時期もあったではないですか?
そうした場合、たたき台となった彼女の理論に対して、私は「脇が甘いのでは、、、」
と思って書いたのです。
飄々と、いつものように書いている酒井さんは、今でもお気に入りのコラムニストです。
多分、
みゅんさんと私は、思っていることは、そう変わらないと思いますが、、、
また、よろしければ考えなど聞かせてください。
では、
お元気で。
投稿: せとともこ | 2004.09.15 11:03
私も瀬戸さんに同意見です。
決して辛辣ではないと思います。
酒井さんのエッセイは、想像力が欠如している人が書いているという印象です。
「対象全て(いずれの立場でも)に対して。優しくない」
その通りだと思います。
「小学校は工場」といった内容のエッセイも書かれていますが、あれも読んでいて残念に思いました。
ものの見方が、一方的なのです。
ある一つの小学校を短い時間の間見学しただけで、断定できるものでしょうか?
楽しく通っている子ども達にも、一生懸命な先生に対しても
(そういう方達だって、現にいます)暖かい目は向けられていない。
言葉がきつい人・意見が極端な人は、マスコミにもてはやされる(踊らされる?)時代なのでしょうけれど・・・。
投稿: key | 2004.12.05 03:31
keyさん。
こんにちは。
コメント有り難うございました。
さて、私は「小学校は工場」という本はまだ読んでいないので、何とも言えませんが、keyさんのコメントを拝見しただけで、大方の察しはつきます。
今度、機会をさがして読んでみます(多分、立ち読み(^^;)
酒井さんの書かれているエッセーは、女同士の愚痴ともため息とも思われることを、軽くオモシロ、おかしく書いてあり、それこそが彼女の存在価値であると私は思っています。職場での女子社員の実態とか、、、
まぁ、軽く笑って「はい、さようなら」で良かったのです。ところが、そんな彼女が「一躍有名」になり、まるで社会現象を作り上げた一方の旗手になったことが、彼女の不幸では、と私は思っています。
つまり「分を超えている」のです。
彼女に社会を斬る能力も発想も感性もないと私は思います。多分、「小学生、、、」もそうだと思います。
身の丈以上のことを書こうとしたのでしょう。
酒井さんも気の毒だと私は思います。
彼女は、本来は「お気楽なOL」事情をお気楽に書いていたい野では、、、と思うのですが、、、
彼女のお気楽シリーズは、彼女らしくて私は好きです。
彼女もまたマスコミの作った幻影なのでしょうね。
と、思うのですが如何でしょうか???
長々と書きましたが、
頂いたコメントのお蔭で、また色々考えるきっかけになりました。お時間がありましたら、また見えてくださいね。
では、、、
また。
投稿: せとともこ | 2004.12.06 16:43
はじめまして。
新成人が「負け犬」を反面教師的存在と捉え、早期結婚願望が高まっているという記事を見ました。私も同類です。「負け犬の遠吠え」を読み終えて、やっぱり「勝ち犬」の方が断然カッコ良いや♪と言う感想を持ちました。(「勝ち犬」の筆頭に緒方貞子さんや白洲正子さんが掲げられてたのが大きな理由かも。)
負け犬になりたくない。と言うのではなく、単純に勝ち犬がものすごく格好良い、実に尊ぶべき存在なんだなあ…と「勝ち犬」に対する強い憧れと尊敬の念が本を読んで一層強くなりました。「享楽的に生き過ぎた」(BY酒井さん)負け犬に対しても夫と二人だけの毎日楽しくお気楽のん気な生活を送る者にとって、未婚と言うだけであっさり「負け犬」と言うレッテルを貼られることに対して誠に申し訳ないです。私の方がよっぽど享楽的なのに…と。決して嫌味ではなく。
自虐ネタが18番の酒井順子さんにとって願ったりかなったりではないでしょうか。根本的には勝ち犬賛美の内容と私は勝手に読み取ったのですが…。まあ、単純に笑えるエッセイとして本屋さんの立ち読みで済みました。
私の周辺では勝ち犬にカテゴライズされる人々が優越感にも似た感覚で高みの見物的に読むといった傾向もありました。読み終わっても「だから何?」と言う風でしたが30代女性全般の話題性(NHKしゃべり場30代バージョン)としては充分過ぎる手応えでエッセイストとして本望ではないのでしょうか。
自虐ネタ酒井さんは結構マゾっ気が強い気がします。だからご本人は瀬戸さんのようないわば同業者からのアカデミックで真摯な、そしてある意味熱いご意見に喜びと興奮を感じてるかもしれません。瀬戸さんがしきりに強調される酒井さんの作家としての力量に対するご意見も含めこれだけ話題になる本も凄いですね。「どーでもいいや」と無関心な人が結構多かったのも事実ですが(たとえば40代後半以上の友人や夫、ジーちゃんバーちゃんなど)。
投稿: 液晶ぷら子 | 2005.01.18 22:44
液晶ぷら子さん。
こんばんは。
コメント有り難うございます。
私も液晶ぷら子さんのご意見、賛成です。
酒井さんが考えた以上に「負け犬」云々、言葉が独り歩きした感がします。
例えば、つい最近の女優杉田さんの結婚ニュースにしても「負け犬から勝ち犬へ」という冠がついていたりと、マスコミの力を感じます、、、
ただ、酒井さんやマスコミを離れ、本来の社会現象として見たとき、「結婚しない女たち」が抱える問題は大きく深い。そして、それは結婚している女性にも同じだと思います。
しっかりと分析して、なおかつ普遍的な結論は出ないかもしれませんが、今後とも考えていかなければならないテーマです。
また、お時間がおありの時はご意見などお聞かせくださいね。
では、まだまだ寒い時期、風邪などお気をつけて。
投稿: せとともこ | 2005.01.19 21:16