« ギャルからおばさんまで | トップページ | 覿面の罪 »

2004.08.03

地図にない町

「地図にない町」と言っても、
フィリップ・K・ディックの本のことではありません。
アメリカのテネシー州にあるオークリッジのことです。
オークリッジは、テネシー州の東部の本当に小さな町です。
静かで安全なこの町の新聞は、
誰々さんが、病気で亡くなった、、、とか、
そんな回覧板のようなニュースを伝えます。
アメリカでは珍しい鍵をかけなくてもいい町です。
アパラチア山脈の谷間にひっそりとあるこの町は、
実は、
第二次世界大戦時には、
「地図」には載っていませんでした。
それは、
誰も知らないところで、秘密のうちに、
「原子爆弾」を作る目的で、できた町だったからです。
そうして、
戦後、残された施設は、
国立オークリッジ研究所として、「原子力の平和利用、研究」のために使われています。
勿論、今では、地図にしっかり名前があり、
全世界から、研究者が、訪れています。
そして、
8月のこの時期は、反戦の方々も訪れます。
研究施設の前で、
平和団体によるデモがささやかに行われています。

ワシントンD・Cには、スミソニアン博物館という大きな博物館があります。
この博物館の航空宇宙博物館は、エノラゲイという、広島に落とした原爆が展示されています。
ここに、エノラゲイが展示されるとき、多くの日本の平和団体から抗議がありました。
アメリカ側の言い分が、
「ヒロシマへの謝罪ではなく、科学技術の粋という観点からの展示」であるというための抗議です。
実際、私たちが、スミソニアンを訪れたときも、
係りの、お兄さんは、そのような口ぶりでした。
「どこから来たの?」
「ヒロシマ」
「お〜〜〜〜ヒロシマ。
それは、スバラシイ!!!
ヒロシマに落ちた原爆は、これです!!!」
と、言う感じ。
私は、「今も原爆で苦しんでいる人々の話し」をしました。
すると、彼は、
「おおおお〜〜〜〜〜。」
と、いうだけでした。
そして、またエノラゲイがいかに、「敵」を認識して、
ピンポイントで、原爆を落としたか、、、を、冷静に話してくれました。
彼は、
原爆のおかげで、戦争の終結が早くなったと、言いました。
そんな彼も、なぜか「パール・ハーバー」に対しては、
違った感情を持っています。
しかし、全てのアメリカ人は、モチロンそうではありません。
プールで、友達になった人たちは、
「アメリカの戦争犯罪」について、しっかり語ってくれました。
一方、
ヒロシマでは、
これから「暑い八月のその日」を迎えます。
私の友人は被爆者(胎内被爆)で、
いまなお苦しんでいます。
ヒロシマでは、小学校、中学校で、「平和教育」が教えられます。
そこでは、
原爆の無残さ、残酷さが伝えられます。
「再び、あやまちを繰り返さないこと」を学びます。
しかし、
こうしたヒロシマの平和教育であっても、
日本人が、他国に何をしたか、については、あまり学びません。

今、
中国、重慶での反日運動が、いろんなところで、
取りざたされています。
過去の歴史が、また思い返されているようです。
日本人が、中国の人々に対して行った事についての、
あるいは、彼らにしたら、納得していない「戦後処理」についての不満なのでしょうか?
一気に噴き出しているようですが、
これもまた、
すべての人が、同じ気持ちかというと、そうではないと思いますが、、、
日本人にしても、かの地での苦い体験を持っている方はいるでしょう、、、

さて、
こうしてみると、
「人は、やったことより、
やられた方のことを、強く覚えている」ような気がします。
それは、ある意味当然だと思うのです。
ただ、
だからといって、「それがいい」ということでは、ないと思います。
アメリカ人はパールハーバーを覚えているけれど、原爆には鈍感。(今なら9・11でしょうか?)
日本人は、原爆を覚えているけれど、大陸での出来事は鈍感。
中国人は、太陸での出来事を覚えているけれど、、、、、、、
とかとか。
戦争というものの愚がそうさせるのです。
悪いのは、
「戦争」だと私は思います。

そうして、
今、世界は新たな憎しみの構図が生まれようとしています。
イラン、イラク、イスラエル、旧ユーゴ、、、、、
果てしなく続く「憎しみの連鎖」は、
ただ繋がっていくだけでなく、
増幅していきます。

先輩たちが、流した涙や、
無残に散った命の重みを、しっかりと受け止め、
恨みが、恨みを超える時を迎えなければならいと、
私は思うのです。
「恩讐のかなた」、のように。

地球上のどこかに、
私たちの知らない
「地図のない町」があらたに出来ることのないように、、、

また、やってくるヒロシマの暑い8月6日を思いながら、
平和への祈りを込めて、
書きました。

|

« ギャルからおばさんまで | トップページ | 覿面の罪 »

コメント

中国(南京・旧満州)、オーストラリア北部、韓国、東南アジアにもたくさん日本人を恨む人がいます。
やはり、親兄弟・親戚を殺された憎しみが受け継がれていくのでしょう。半世紀以上経ったからといって薄れるものではないと思います。
また、日本人がしてきた過ちを「知らない」私達がいます。その無知さに腹を立てる人もいるそうです。(オーストラリアに留学していたいとこが言ってました)
戦争を経験してきた人が少なくなる中、そういった「過去の出来事」ではなく、「今も続く事」である事をしっかりと理解する必要があるのかもしれません。
中国が日本の軍国化に敏感になっていて、過剰な反応を示しているのではなく、我々が鈍感になっているのではないかと私は思います。

話がそれますが、日本にも「地図に載っていない場所」がありましたよね。
ハンセン病の隔離施設は最近まで記載されてなかったと思います。(岡山の某施設は、私の持っている1997年の道路地図には道路も書かれていませんでした。)

投稿: にしかは@京都 | 2004.08.03 22:33

 今、「新撰組」が人気ですが、会津(というか福島県)の一部では、今でも長州(山口県)の人々とは結婚してはいけないと教えられるといいますね。戊辰戦争のうらみなのでしょうが、本当のところはどうなんでしょうね。
 ユダヤ人が60年前に受けた傷を今でも覚えているように、パレスチナの人々もその痛みを少なくとも60年は覚えているでしょう。

 冗談みたいですが、私の死んだ父の誕生日はパールハーバーの日、私の誕生日はヒロシマの日です。

 当面している問題は、あと数日でまた歳をとってしまうことなのですが。

 九州は大分県中津市に菊池寛「恩讐の彼方へ」で有名な「青の洞門」があります。山国川という川のそばなので、大学時代によく夜にバイクでホタルを見に行ってました。

投稿: Rough Tone | 2004.08.04 00:48

20年前から、バイク仲間で毎年8月6日の朝、広島に行っていました。原爆ドームの前で黙祷し、核兵器がなくなること、平和な世界がやってくることを願い・・・20年過ぎましたが、まだ核兵器はなくならず、戦争の惨禍もまた、尽きません。
この夏もまた、仲間は広島へバイクで行きます。ここ数年、わしは子育てで忙しくていけませんが、[恩讐の彼方に」築く未来を目指して、わしは、わしの地図を今夜も描き続けます。

投稿: 龍3 | 2004.08.04 01:26

にしかは@京都 さん。
Rough Tone さん。
龍3さん。
コメント有り難うございます。

にしかは@京都 さん。
本当に仰るとおりですね。
なかなか自分の無知には気付かないという現実。
しっかり考えていきたいです。
尚、教えていただいた、「ハンセン病」の施設。
う〜〜〜ん。胸が痛いですねぇ。
なんと言っていいのか、、、
これもやはり無知のなせる罪だったのですね。
今まで苦しんで来た方々が、「日の目」を見て、誤解が解けたことは大きな一歩ですね。
考えさせられます。

Rough Tone さん。
お元気ですか????
随分、お忙しかったようですね。
でもまた、あなたの文章が読めるかと思うと嬉しくなります。
ところで、明日が誕生日ですか。
お父様の誕生日もあわせて考えると、なかなか感慨深いですね。
命の重みを実感します。
「ここにある」ということの意味をしっかり考えていきたいですね、、、

龍3さん。
いつも素敵な写真、拝見していますよ。
さて、
バイクでの旅も素敵ですね。
お友達は、広島に行かれるのですか、、、、
くれぐれも気を付けて行ってほしいものです。
それにしても、
恩讐の彼方に築く未来への旅達が、
暁のライダーって感じで、カッコイイ。
また、ブログに書いてくださいね。
楽しみにしています。
では。

投稿: せとともこ | 2004.08.05 11:54

最近、妹と食事をして、
もっと私のことも書いてよって言われました。

それで思い出したのですが、
妹から聞いたエピソードです。

小学生の頃に、
戦争関係のテレビを見てたのかな?
私は全く記憶にないのですが、
妹が覚えてて良くこの話題を出します。

妹 「おにいちゃん?どっちが敵で、どっちが味方なの?」

私 「戦争に敵も味方もないよ。悲しいだけだよ。」

こんなことを言う小学生だったらしいのに、
いまでは自分のことばかりで恥ずかしいです。

もっとも、何かをしようとする前に自分をしっかりと持たないと話にならないのですが・・・

歯がゆさばかりがつのります。

せめて考えることだけは放棄したくない・・・

投稿: mossarin | 2004.08.06 10:22

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15797/1111861

この記事へのトラックバック一覧です: 地図にない町:

» そこにいる「人々」 [FAIRNESS]
久々にBughdadBurningの記事(英語版)が更新された。 内容はイラクの [続きを読む]

受信: 2004.08.03 17:55

» 水に流す [愛のまぜご飯]
  『他人の過ちを見つけるのは簡単だが、自分の過ちを見つけるのは難しい。   じっさい、私たちは、穀物の粒をふるうようにして、   他人の過ちは細かい箕... [続きを読む]

受信: 2004.08.04 13:08

» 平和祈念日 [muse-A-muse]
しばらくウジウジと考えていたけど、やっぱり行かないことにした ・・TVで見よう 昨日の夜 ケータイの着メロを作り終えた満足感なんかを感じながら寝床におさまり... [続きを読む]

受信: 2004.08.06 08:07

« ギャルからおばさんまで | トップページ | 覿面の罪 »