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2004.09.21

学力とは何か?

学歴論争、あるいは学歴神話を考える前に、
「学力とは何か」というかなり、突っ込んだテーマに挑戦します。

「学力」は日本語です。
つまり他の語にはこの概念に匹敵する語はない、ということです。
学力と私たちがひとまとめにする言葉のなかに、
実は二つの意味があるからです。
まず、誰でもが思う
「読み、書き、そろばん」という基礎的な力です。
次に、それだけでは、ちょっと落ち着かないということで、
「自ら考え、行動し、表現する」力、
つまり実践的な能力にまで拡大して定義されます。
この二つは、はっきりと区別されることなく論議され、考えられてきたことに、
今日の混迷の原因の一つがあると思います。
「分数ができない大学生」で一躍有名になった西村和雄さんのグループのデータから「計算力の低さ」=「学力低下」に結びついたのです。
時あたかも1999年、三年後には「完全5日制」が導入され、
ゆとり教育、総合学習が学校の中を大手を振って歩いていく、というその危機感、不安感があった時でした。
この本は爆発的に売れ、読んでないまでも、
「今どきの大学生って分数できないんだって」という言葉は世間に流布しました。
ここでいう学力は英語のarchivementに近いものです。
一方、この対局にいて、
「実践的な力」を伸ばす方向にこそ教育はあるとして、
学習内容削減を叫び、なおかつ実行した(個人的には悪名高いと、冠をつけたいんだけれど、、、)文部科学省の寺脇研さんが代表です。
この、中間にいるのは、「学力があぶない」などの著書で、これまたブームを作った大野晋、上野健爾さんなどです。尾木直人さんもこのグループに入ります。
一連の学力論争の構図はこうして、
お互いが「学力とは何か」という出発点を異にして始まりました。
論争は論争で大いにやればよいのですが、
ここで一番困ったことは、関係省庁である、文部科学省が時々で揺れたことです。
つまり、
ゆとり教育に代表されるところの「実践」を重じる方向から、
「基礎への転換」をはかり、さらに2003年に文部科学大臣は「メッセジー」として実践重視に再転換しました。
こうした流れの中で保護者や教員が戸惑いを隠せなかったのは言うまでもありません。
「学力とはなにか?」は宙に浮いたまま、不安と焦りだけが一人歩きをしました。
つまり、
「学力低下論争」として。

学力低下不安現象が何故起きたかについて、
尾木直樹さんの本によれば(「学力低下」をどうみるかーNHKブックス)
「学力論争」は戦後五回あり、
いずれも経済不況と不可分の関係にあるというのです。
一回目は1948年。(47年に教育基本法と、学校教育法が公布)
二回目は1961年。(岩戸景気の終り)
三回目は1975年(完全失業者100万人突破)
四回目は1992年(バブル崩壊)
そして、2002年、本格的な金融危機を迎え、今に至っている。
学力論争と、社会情勢は密接な関係にあると言っています。(興味のある方は読んでみてください)
そして、尾木さんはこうも言っています。
そのいずれもが「現場を無視して論争だけが一人歩きしている」と。
ここでいう現場の声とはとりもなおさず「子どもの声」と思ってください。

「天動説」を信じている子どもたちが4割、
ということで、今、話題になっていますが、
始めに書いた学力の二つの意味、
つまり基礎的な力も、応用する力も低下してきているのでしょうか???
しかし、
これは、子どもの能力とは別の所の問題があるのは明らかです。
つまり、
学習指導要項の貧弱さに起因しています。
こののまま、進めば、確かに子どもたちの本来の能力は摩滅していくような気がします。
時代を担う子どもたちの教育を保障していくのは、私たち大人の責任です。
この問題、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

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コメント

小学2年生頃まで、娘に「考えさせる」勉強をしたことは以前にお話したと思いますが、その娘がいとこにそれを遣っていたそうです。
あまりにも疲れるので、逃げたのかと思って多少残念に思っていましたが、母からそれを聞いて、その時の私の苦労が報われた気がしました。
親も、点数だけにこだわるのではなく、また、子供と共に「疲れる」必要があるのかもしれません。

いつも楽しく読んでいます。
暑い日が続きますが、学ぶことの楽しさをたくさんの方に教えてあげてください。

投稿: 聞きかじり | 2004.09.21 14:44

聞きかじりさん。
こんにちは。
書き込み有り難うございます。
本当に、仰るとおりと思います。
親がかけたエネルギーは絶対、子どもに「力」になっていると思います。
お嬢ちゃんと、いとこの子との様子。
なんだか目に浮かびます。
微笑ましい(^.^)
そういうのって、やはり嬉しいですよね。
私もハッピーになりました。

さて、一連のプロ野球騒動?
どうなんるんですかね???
聞きかじりさんのブログ、拝見していますよ(^.^)
また、記事書いてくださいね。
楽しみにしています。
では。
お元気で。

投稿: せとともこ | 2004.09.22 12:55

TBありがとうございます
> 学習指導要項の貧弱さに起因しています
おっしゃる通りだと思います.教員が努力しなければ達成できないレベルの高水準の基準が必要ではないかとも感じています.
作文と理科,この両輪で活動なさっているとのこと.言語能力と科学的な理解力は分離不能ですが,サイエンスボランティア活動などでも,この両輪を一緒にドライブしようとする人が少ないと感じています.
今後のご活躍に期待しています.

投稿: 小言日記 | 2004.09.22 14:14

プロ野球は、逆にこれを機会に変えたい!というつもりで「ゆびとま」さんについて行きます。
私に出来ることは、どうやってブロガーの意見を選手会や機構に伝えるかってことだけでしょうけど。
カープみたいに低年俸で頑張っているチームもありますしね。

投稿: 聞きかじり | 2004.09.22 18:27

この件で、文部科学省からの一言です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040922-00000230-kyodo-soci

投稿: calc | 2004.09.22 23:23

小言日記さん。
聞きかじりさん。
calcさん。
おはようございます。
コメント有り難うございます。

小言日記さん。
理科教育の実験・観察や、
算数のなかでは、
「数量・図形」は明らかに時間が削減。
子どもたちは「考えない」。
ひたすら暗記、、、
です。
授業でやっていることの大半が、計算と漢字。
ってことに、ますますなっていきます。
本当にこの先、どうなることやら、、、
しっかりと見ていかなければと思っています。
これからもよろしくお願い致します。

聞きかじりさん。
まずはストの回避。よかったですね。
それにしてもこの間の動きを見ていて、
いろいろ勉強になりました。
「諦めない」事ですね。
また、楽しい記事書いてくださいね。
では。

calcさん。
お知らせ、有り難うございました。
「まぁ、あんなものか、、、」ってところですね。
ところで、calcさんのブログ、拝見をいたしました。
すごく勉強になりました。
これからも、いろんなこと教えてくださいね。
楽しみにしています。
では。
お元気で。

投稿: せとともこ | 2004.09.24 09:55

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