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2005.06.06

死んだ魚を見ないわけ

死んだ魚を見ないわけという本を再び読んでいます。
著者は河井智康さんという海洋生態学者です。
この本をはじめて手にしたときは、
「死んだ魚を見ないわけ????
えええ〜〜〜そんなの決まっているじゃない。大きな魚に食べられているんじゃないの?」
と、思いました。
そんな当たり前の事を、どうして悩むんだろうと、、、
実際、著者は魚の死因は、
環境、飢餓、他の動物に食われることが原因であろうと予測する。
しかし、ここで止まらない。
ならば、自分の目で確かめよう。魚の墓場を探して、魚達の生態にせまる。
それはとりもなおさず、動物の進化の過程を海で知り、生体の不可思議を海で調べるということである。
彼は「しんかい2000」という深海潜水調査船にのり、実験をする。
仮説をたて、実験を行い、結果を分析する。

その中で、「魚達のじつに美しい形は合目的である。」と思い、遠い5億年前に思いを馳せます。
初め、地球に登場した魚は、おそらく棘皮動物からであろう。
そのうち、脊索ができるが、どのように進化して、発達を経て真の魚になったかは今は知ることができない。
その後、「魚類時代」を経て「両生類」「爬虫類」「鳥類」「哺乳類」へと進化は続く。
魚は美しい。
泳ぎやすい流線型。空からは見えにくいように背は青色。
下からは光って見えにくいように腹は白色。
合理的、機能的な美しさは5億年の時に鍛えられた芸術である。
そしてさらに、
「死んだ魚はなぜいない」という謎解きに魅せられながら著者は言う。
〜〜〜
物事の本質や現象のメカニズムを掴むためには、単なる実証の世界だけでなく、弁証の世界へも足を踏み入れなければならない」
〜〜〜〜
彼は仮説をたて、実験を行うとき、その拠り所にしたものは、
「対極」でした。
魚は多産であるが、もしそうでない場合はどうか???
というように道筋をたて考えることで、物事の本質に迫ろうとしました。
「死んだ魚はいない」という出発はやがて「なぜ死んだ魚がいるか?」にまで行き着く。
その対極から、自然の淘汰を実証的に調べていく。
テーゼとアンチテーゼからアウフヘーベンを導き出す、弁証法的な論理の先に真理はあるのでしょうか?

私たちが普段、見過ごしているような事柄に、疑問を抱き、その解決にロマンを求めて地道な活動をしている一研究者の姿から見えてくるものは、
「ひたむきさ」でした。
魚が多産で、人間や動物の捕獲にも耐えられるものであるからこそ、
人間の形態は今のようなものである。
という著者は、同時に自然環境の保全を警告もしています。
生命の源、海に潜む謎に魅せられながら、
その美しい海を次にも伝えていきたいと私も思いました。
海を見ながら、
「この海はどこに繋がるのか?」
と、まだ見ぬ明日への思いを胸に抱いていたその海の底には、静かに生命誕生の謎が眠っているのですね、、、
時の試練を超えて、、、

遅くなりましたが、昨日6月5日は「環境の日」でした。

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コメント

瀬戸さん お久しぶりです。
TBありがとうございました。
本当に見過している事や気がつかない事って多いのでしょうね。
先日の金属片騒ぎなども、本当の原因はまだ色々可能性があるかもしれないけど、「気がつかなかった」事には変わりないのですよね。
人が道を歩かなくなったのか、歩きながらも周りに目を向けなくなったのか、いずれにしても「気がつかなかった」ということから色々な事が分かるのでしょうね。

そういえば、私も海の近くに住んでいるのですが、食べる時以外(笑)、魚を見るということが少なくなりました。

それにしても瀬戸さんは色々な本を読んでいて尊敬してしまいます。


投稿: FAIRNESS | 2005.06.07 11:07

(追記)
「気がつかない」のもそうですが、今回のエントリーに有った「対極」で見ると、そこに「気がついた」ことで騒ぎになるところにも注目しなければ不公平ですね。追記しておきます。

投稿: FAIRNESS | 2005.06.07 11:14

FAIRNESSさん。
こんにちは。
コメント有り難うございます。
FAIRNESSさんの書かれている内容に適当ではないかもと、悩んだのですが勝手にトラックバックさせていただきました。
「凡庸」。
とても考えさせられる内容で、何回も読んでいます。
私はいつも自分の小ささを目の当たりにして愕然とします。
FAIRNESSさんの記事の宛先、Big Banさんにはコメントさせていただいたのですが、中島敦の「山月記」について。
そこには、
「人生は何も為さないにはあまりに長く、何かを為すにはあまりに短い」とありました。
私は己の小ささを知っているから、何ができるかと問われれば、何も出来ない自分をみるばかりですが、やはり「時間」との葛藤に焦りや苛立ちを覚えます。
まだまだ、、、
まだまだ、、、ですねぇ。
「旅はおわらない、、、」かぁ。

また、いろいろご教授下さいね。
楽しみにしています。
なお、不安定な季節になりました。
お体、お大切に。
では、また。

投稿: せとともこ | 2005.06.07 15:43

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