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2005.07.22

グッバイ、レーニンを観て

2003年ドイツ映画グッバイ、レーニンを観ました。
ご覧になった方も多いと思いますが、
あらすじは、以下のとおり。(ネタバレにならない程度に)
〜〜〜〜〜〜〜〜
ベルリンの壁崩壊前の東ドイツ。主人公アレックスは、母と姉との3人家族。実は、父は家族を残し、「西側の女性」のもとへと去っていた。
その為、母はショックで心神耗弱になり、病院へ。
しばらくの療養後、母は帰ってくる。
そして変身。
優秀な社会主義者として。
しかし、時代は流れ、歴史は動く。
ある日、アレックスは反社会主義デモに参加して捕らえられた。
そんな彼を見た母親は、ショックで心臓発作を起こしてしまう。
そして、意識不明、昏睡状態になる。
奇跡的に蘇生した彼女。
しかし、医者は言う。
次に心臓発作を起こしたら命の保証はないと。
母にショックを与えてはいけない。
しかし彼女が眠っていた8ヶ月の間にベルリンの壁は崩壊。
東西ドイツは劇的に変化する。
このことを知ったら母の心臓は持つまい。
そこでアレックスは考える。
「今はベルリンの壁崩壊以前の東ドイツなのだ」と母に信じ込ませることを。
こうして、アレックスの奮闘が始まり、物語はいよいよ本章へと移っていく。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

では私の感想。
優しい映画でした。
全体が、淡く曖昧にゆったりと流れていく中で、
人々の思いが軽く、重く伝わってきます。
「時」を逆行させるためにアレックスが奮闘する様は、ちょっとしたスパイ映画を観ているようにハラハラドキドキ。
取り残された母への思いと、生活に追われる「今」とが複雑に交錯している様子が、BGM のように静かに語られています。
母の友人たちの「現実」と「昔」とのギャップの中で揺れ動く心理が、さりげなく伝わってきます。
偉人と憧れた宇宙飛行士の変身は、したたかでありながら、さわやかでもありました。
そして、アレックスを支える恋人と友人。
ひたすら、母を思い、母を愛する主人公が周りを次第に変えていく。
そして主人公本人も。
母のために再現しようとした「東ドイツ」。
しかし、時を戻す作業をしていくなかで、いつのまにか、アレックスは、
見て、実感して、考えていきます。
「歴史を動かす大きなエネルギー」を。
そして、その時代を生きた証を、確認することになります。
時代は流れ、動くことを横糸にしながら、
大きな一本の縦糸は、アレックスの「母への思い」であることは言うまでもありません。
母は死んだ。
幸せに。
東西の統一を知らずに。
と、アレックスは思っている。
しかし、しかし、事実はどうか。
母は知っていた。
グッバイ、レーニンを。
知っていながら、最後までアレックスにつき合った、その母の慈愛に満ちた眼差しが、
涙を誘いました。
淡々とした描写の中で、親子の愛情が押しつけがましくなく心に滑り込んで来る、とても素敵な映画だったと私は思いました。

私がベルリンを訪れたのは1993年の春。
東西統一から3年半。
未だ混迷の様子が色濃く伺える時期でした。
ブランデンブルク門を正面から見ることができる。
それがどんな意味を持っていることかは、ドイツ人なら誰でもが知っています。
そのブランデンブルク門前には、多くの露店が並び、観光客相手に「東」のものを売っていました。
また旧ソ連のものが多く並んでいたことが、とても印象的でした。
そして、ベルリンから約30分。ブランデンブルク州の州都であるあの有名なポツダムに行きました。
駅を降りると、周りには畑があって、ネギやらレタスが植えられていました。
西ベルリンから来た私には、あまりの田舎に、ちょっとビックリ。
サンスーシ宮殿を見て、なんとなく東ベルリンの誇り、ドイツ人の誇りを感じたことを思い出します。
まだトランバットが路上あちこちに駐車されていて、思わずカメラをガチャリ。
あれから、さらに10年以上年月を重ねましたが、その後どうなっているのだろうか???
映画を見ながら、懐かしく思い出しました。

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