厚生労働省の研究会が、労働時間規制ない新制度を盛り込んだ報告書をまとめました。
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厚生労働省の「今後の労働時間制度に関する研究会」(座長・諏訪康雄法政大教授)は25日、年収や健康確保措置を要件に労働時間規制や残業代支払いのない制度を提案する報告書をまとめた。有給休暇取得の促進や残業削減策も盛り込んだ。
厚労省は労働基準法を改正し、2007年に制定を目指す労働契約法に盛り込みたいとしている。今後、報告書は労働契約法を審議している労働政策審議会の俎上(そじょう)に載せるが、労働時間規制を外す制度や残業代の割増率アップは、労使双方に受け入れがたい論点もあり、激しい議論になりそうだ。
(上記ニュースより)
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つまり労働時間も規制緩和と言うことでしょうか?
このニュースが出たときから、興味を持ってちょっと詳しく調べてみました。
労働基準法を覗いてみると、
以下のように労働時間を定めています。
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(労働時間)
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
第32条の4の2 使用者が、対象期間中の前条の規定により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し一週間当たり40時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第33条又は第36条第1項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第37条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。
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そもそも働く人の権利を守るためにできた労働基準法の根本を揺るがすような今回の報告。
では、
報告書は何をどの様に分析してこのようなまとめを発表したのでしょう?
これは正式名を「新たな労働時間規制の適用除外の枠組み」(新しい自律的な労働時間制度)と言います。
「自律的に働き、かつ労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価されるのがふさわしい労働者のための制度」が必要であるというのがその言い分です。
この制度を適用された労働者は、
労働時間、休憩、深夜業についての規定の枠の外におかれる(法定休日の規定は残る)。
残業代も深夜勤手当も払われない。
労働時間を把握する義務も使用者は免れる。
そしてこの制度の対象となる労働者の要件として、
・職務遂行の手法や労働時間の配分について使用者からの具体的な指示を受けず、かつ、自己の業務量について裁量(自分できめられること)があること
・労働時間の長短が直接的に賃金に反映されるものではなく、成果や能力に応じて賃金が決定されていること
・一定水準以上の額の年収が確保されていること、
などです。
(お役所の文章だから難しい)
しかしよくよく見ても、報告には、具体的な対象労働者の範囲は
「労使の実態に即した協議に基づく合意により決定することを認めることも考えられる」
とだけしか書かれていません。
この含みのある部分は拡大解釈されるなら、
企業側の都合で対象労働者の範囲は拡大されかねませんよ、と言うことです。
さて、こうした報告が出てきた背景は、企業の論理であることは言うまでもありません。
日本経団連は昨年6月に提言を発表。
その中で、
年収四百万円以上のホワイトカラー労働者なら、だれでも労働時間規制の適用除外にするよう強く働きかけています。
「企業における中堅の幹部候補者で管理監督者の手前に位置する者」
「企業における研究開発部門のプロジェクトチームのリーダー」です。
つまり働き盛り、日本を支えている方々です。
この人たちの労働力を「ただ働き」させようというものです。
それでなくても、長時間労働、過労死・過労自殺の続発、サービス残業の横行といった、世界で例のない日本社会の異常な現実にさらに拍車をかけようということなのでしょうか?
また報告書は、新制度の導入の理由の一つに、
「働き方の多様化」をあげています。
しかし、具体的には何も示されていません。
報告書の中には、
新制度が、「労働者のストレスを増加させ、…心身の健康に影響を及ぼす可能性がある」と懸念ものべています。
自分たちでも分かっているということでしょうか?
つまりは確信犯?
〜〜まだ寝てる 帰ってみれば もう寝てる〜〜
第5回サラリーマン川柳の一位、「遠くの我が家さん」の作品。
遠くなくても、「すごそこの我が家さん」にも、
奥さんの寝顔しか知らない現実がすぐそこに待っているということでしょうか???
この報告が今後辿る道は、
厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会の労働条件分科会に提出。
「今後の労働契約法制のあり方についての論議」とあわせて審議。
そして7月をめどに結論を出し、通常国会の俎上に上るということです。
ついに私たちの「時間」まで管理、規制緩和の対象になるいうことです。
これは大変です。
しっかりと今後の動きを見ていかなければ、、、
なお、参考に今回の報告のポイントを揚げておきます。
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▽勤務態様要件
(1)職務の遂行や時間配分について、使用者から具体的な指示を受けず、自己の業務量について裁量(自分できめられること)がある労働者。
(2)労働時間の長短が直接、賃金に反映されるものではなく、成果や能力によって賃金が決定されている労働者。
▽本人要件
(1)一定水準以上の年収が確保されている。
(2)本人が同意している。
▽実効性ある健康確保措置が講じられていること。
▽導入にあたって労使の協議にもとづく合意があること。
対象者の具体的イメージ
(1)中堅の幹部候補者で管理監督者の手前に位置するもの。
(2)研究開発部門のプロジェクトチームのリーダー。
法的効果
▽対象労働者は労基法第41条の管理監督者と同じように労働時間および休憩にかんする規定が適用されないとする。深夜業にかんする規定(割増賃金にかんする規定など)も適用を除外する。法定休日については除外しない。
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