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2006.01.12

対岸の彼女

昨日は煮詰まった空間からの脱却ということで、日々の何気ない日常に潜む吹き溜まりについて書いたりしました。
そう言えば、本棚の隅に追いやられていた角田光代さんの対岸の彼女を思い出して(角田さん、ごめんなさい)
早速、今朝は読み始めました。
本の内容紹介には、以下のように書かれています。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。性格も生活環境も全く違う二人の女性の友情は成立するのか!?
「負け犬」という言葉が社会的に認知されたいま、ついに書かれるべくして書かれた小説が登場しました!
独身の女社長・葵と、夫と子供を持つ主婦の小夜子は共に三十四歳。性格も育った環境も違う二人の女性に、真の友情を築くことはできるのか——。働く女性が子育て中の女性と親しくなったり、家事に追われる女性が恋愛中の女性の悩みを聞くのは難しいもの。既婚と未婚、働く女と主婦、子のいる女といない女。そんな現代女性の“心の闇”がリアルに描かれます。
(上記ファイルから)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ううううう=====んんん。
この書評、ちょっと違うな。
尤も、書評の評論をする積もりはないので、これはこれとして、
私の読後感は、
「焦り」
です。
「女同士の友情」を縦糸に、
「生きにくい世の中を女性として如何に生きるか」を横糸に構成されている、
分かりやすく、読みやすい小説です。
設定は、現実と過去とが入り組みながら、
二人の主人公が交差していく中で、それぞれの抱える問題がクローズアップされてきます。
そして、その問題の多くは、
女性が抱える、あるいは直面している問題でもあります。
独身女性は独身であるがゆえに、
既婚女性は、自分以前に家族の一部分であることの閉塞感ゆえに、
悩み、苦しむ場面は、女性作家ならではの細かい描写で描かれています。

ふとした時、それは家事の合間とか、
子どもとの会話とか、
夫との表現の違いとか、、、
そんな時に、ふと感じる「自分の人生とは何か」という疑問。
あるいは、
過去の思い出に出てくる女子高校生。
もう、涙が出てくるくらい哀しい。
ささいなことがきっかけでイジメられる。
みんな、自分が対象になるのは、イヤだから強い者に従っていく。
しかし、自分で自分をしきりに撞着する。
その描写がリアルで、泣けてきます。
思春期の傷つきやすい少女たちが、短いスカートの裾を翻しながら
足早に、その時代を駆け抜けていきたがる、そんな思いがジンジンと伝わってきます。
人は決して一人では生きることが出来ない。
人間関係の最初に出会うのは親。
青春時代の幕は親との相克から始まる、
そして友達。
それは必ずしも嬉しくも楽しくもなく、むしろ苦い。
記憶の底に沈めて、日の光はあてたくない思い出や、
彼方にある記憶が引きずり出してくるような小説の中の高校生の彼女たち。
およそ誰でもが経験する「イヤな体験」。
自分のそれは大きくて、負いきれなくて、いきおい蓋をするのだけれど、
実は、
「皆同じ」
という、当たり前のことを思う主人公に、
読者は自分を重ねる。
そして、
過去の上に今があり、
今の延長に未来がある。
過去の亡霊は対岸にいるが此岸にいる主人公には、
もう、思い出の空間はいらない、、、
小説の中の主人公たちも、
それぞれに成長していく。
独身女性は、自分の空間の広がりを求めて。
既婚女性は、家族の中での空間の広がりを求めて。
少々、焦りを感じながらも、
生きていくことのもどかしさと、苦しさと、やりきれなさと、
そして未来に居場所を求めて
物語は終わる。


と、いうわけで、
私はこの本を閉じた瞬間に出た言葉は、
「悩みは深い、煩悩は深い」
フッ====
です。
何も犠牲にする必要はないの。
今のままで、ほんのちょっと理解を示す夫と、
ほんのちょっと分かりやすい子どもと、
ほんのちょっと自分に出来る仕事があれば、
私は、
文句なんか言わないの。
そうそう、
多くはいらないの、一人でもいいから私をわかってくれる同性のお友達と。

と、まぁ誰でもが行きあたっている壁の厚みが、
改めて思い知らされた本でした。
今度、WOWOWで放送されるとか、、、
楽しみです。
まだ、読まれていない方も是非、この機会に手にとってご覧になりませんか?

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