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2006.02.20

茨木のり子さん

詩人の茨木のり子さん死去というニュース。
ご冥福を心よりお祈り致します。

茨木のり子さんと言えば、
やはり「倚(よ)りかからず」
と「わたしが一番きれいだったとき 」ですね、、、

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「わたしが一番きれいだったとき」 

わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達がたくさん死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差しだけを残し皆発っていった

わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った

わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり
卑屈な町をのし歩いた

わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのようにね
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「倚りかからず」
               
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことがある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

以前、茨木のり子さんの倚りかからずの詩について書いた事があります。
それを今、改めて読み直しました。
そこで、私は以下のように書いています。
=========
できあいの学問や思想や宗教(哲学)は、
その先達の真意はともかく、
浅はかながら身につけて、、、
もう身動きできないくらい。
がんじがらめになるくらい、、、
知識で覆って。
浅薄であるがゆえに。

しかし、
一番大切な自分を忘れていたのだが、、、
自分を解き放ち、
自分を見つめ、
自分で考えることを忘れていたような気がします。

茨木さんの詩で改めて、
そして新鮮に感じたことは。

「自分は自分」

であること。

倚って立つものは、
自分であることを、、、
===========

「自分は自分」であると言うこと。
そして、今その自分が容易に見えない、見えにくくなっている不透明な時代であることも
痛感します。
人生の先輩である茨木さんの痛烈で峻烈で、そして優しい詩をもう一度噛みしめながら、
今、生きていることの責任を感じている私です。

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コメント

こんにちは。
私も茨木のり子さんが好きだった1人です。
パソコンで検索していたら、私の大好きな二編の詩が掲載されているここにたどり着きました。つい、トラックバックしてしまいました。
日々の記事についても、私と価値観が似通っているので、興味深く拝見しました。またお邪魔します(^^)

投稿: ラッシー | 2006.02.24 08:36

ラッシーさん。
コメント、トラックバック有り難うございました。
ラッシーさんの楽しくて爽やかで可愛いブログも拝見いたしました。
数学の先生でいらっしゃる由。
一番精神的に不安定な時代の子どもたちに向き合っていらっしゃることと思います。
大変とは存じますが、またいろいろお話などお聞かせ下さいね。

さて茨木さん。
この方の詩は、それこそ心が鷲掴みにされるような感じがします。
一点の曇りもないその峻烈な言葉の一つひとつにタジタジになる自分がいます。
素敵な方を亡くしてとても残念ですが、ご冥福を祈ると共に後を任したと言われている気がしてなりません。
私たちの責任を感じます。
と、いうことでまた色々お話できたら嬉しく思います。
では、、、
今、一番お忙しいときとは存じますが、お体お大切に。

投稿: せとともこ | 2006.02.24 13:13

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