教育基本法誕生59年 その2
教育基本法誕生59年に続いて。
与党教育基本法改正に関する検討会が教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(中間報告) を提出。
それを受けて
教育の国家統制をめざす 教育基本法「改正」法案の国会提出に反対する文化人一二九人の声明として浅井愼平さん以下129人の文化人がその動きを危惧して声明を発表。
以下に声明を掲載します。なおこの声明は2005年1月20日のものです。
状況はさらに厳しくなっています、、、
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
与党の「教育基本法改正に関する検討会」は、二〇〇四年六月一六日、」を発表しました。これを受けて、合意部分について文部科学省側で具体的な法案作成作業に入ったことが伝えられています。この与党検討会は今後、「愛国心」の表現や宗教教育の扱いなど、意見の分かれている項目に関して引き続き議論することになっています。
この中間報告では、「別紙」で前文及び各条項について「改正」の概要が記されていますが、中間報告と銘打っているにもかかわらず、文書化されている部分はごく僅かであり、「改正」にあたっての基本的な理念は何一つ示されていません。また個々の改正点について、その改正理由すら全く記されていません。そして、多くの重要論点については、なお検討を要するとして結論が先送りされています。
にもかかわらず、「別紙」として箇条書き程度に列挙された改正点には、現行教育基本法の基本原理を踏み躙り、その内容を一八〇度転換させようとする意図が随所に見られます。
私たちは、この中間報告に代表される現在の教育基本法「改正」作業について、特に見過ごす事のできない以下の点を指摘し、警告するものです。
教育の国家統制に道を開く十条「改正」
現行法は、戦前の教育が、国家による極端な内容統制によって歪められた反省から、教育と教育行政を分離し、教育行政の教育内容への不介入の原則を第十条で打ち立てました。
ところが中間報告では、この教育と教育行政の分離を定める第十条について、主語を「教育は」から「教育行政は」にすり替え、この一見些細な文言の修正に見せかけによって、教育と教育行政を一体のものとして扱うという重大な改訂を行い、戦前の国家による教育統制を想起させる内容となっています。この改訂と教育振興基本計画の策定がセットで行われれば、現行教育基本法の原理は完全に崩壊し、教育行政の教育内容への無限定の介入を導くことになります。
人間の内心に踏み込む復古主義的な徳目の列挙
とくに問題なのは、復古主義的な徳目の列挙によって教育を統制しようとしていることです。
与党中間報告では、教育基本法に掲げる「教育の目標」として、二〇もの徳目を列挙しています。現行法にある徳目は、憲法の理念と対応したものになっていますが、中間報告では、「伝統文化の尊重」や「郷土や国を愛する(大切にする)」ことを教育目標に組み入れようとしています。これは、およそ法で統制すべきでない領域、国家が文化や愛国心の内容を定め、人々の内心に踏み込むことを是認するものであり、憲法によって保障された思想良心の自由の侵害にあたるものです。これはさらに、憲法の理想を実現するために一体的に制定された教育基本法を、憲法から切り離すものであります。
強者の論理によって教育を再編
もう一つの重大な問題点は、強者の論理によって教育を再編しようとしていることです。
中間報告では、「教育の目標」として「一人一人の能力の伸長」を謳ってはいますが、同時に、現行法が「教育の機会均等」で規定する「ひとしく」という文言が削除されています。これは、すべての子どもがひとしく、一人一人の能力や個性に応じ、その可能性を開花させることのできる教育を受ける権利を保障するという現行法の理念を否定し、教育の差別化、序列化を加速するものです。また、義務教育についても、「人格形成の基礎と国民としての素養を身につけるため」として、権利としての教育ではなく、義務としての教育という考えをことさら強調する内容になっています。ここでも戦前の義務教育観を復活させようとする意図が透けて見えます。
教育基本法の基本法的性格に関する認識の欠如
このような与党合意による「改正」への方向づけは、準憲法としての教育基本法の基本法的性格に関する認識の欠如を反映しています。
中間報告では、教育基本法「改正」の検討にあたって、「格調高い法律を目指す」との前提が示されています。そうであれば、教育基本法の準憲法的な位置づけを踏まえ、憲法との関連が真っ先に検討されて然るべきです。ところが中間報告では、現行法前文中の、「『憲法の精神に則り』の扱いについて、さらに検討を要する」こととし、その扱いを先送りするという本末転倒の過ちを犯しています。これは、最高裁判決でも確認された教育基本法の準憲法的位置づけについての認識が完全に欠落していることを自ら明らかにするものです。
その他にも、中間報告では、本来法が踏み込むべきでない家庭教育について殊更に項目を設けることによって、家庭教育への国家の介入を企図していることや、本来主役であるはずの子どもの視点からの発想が全く見られないなど、看過することのできない重大な問題が多く含まれています。
さらに、このような重要な法律の改正作業は広く市民に開かれた形で行われて然るべきですが、中央教育審議会の答申後、「改正」作業が与党の検討会に移ってからは、その検討内容はほとんど密室の作業として行われています。すべての子どもと社会の将来を左右する、世界に開かれるべき教育の在り方を定める基本法の審議が、このようなほとんど密室の作業として行われていること自体、重大な問題と言わざるを得ません。
私たちはこれまで中教審の教育基本法の「改正」の審議に対し二回にわたり声明を発表し、中教審の教育基本法見直し論議の問題点を指摘してきました。ところが、今回の与党中間報告は、そこで指摘された問題が解消されるどころか、さらに増幅拡大するものとなっていることに、私たちは重大な危機を感じざるを得ません。この中間報告の骨格に従って法案が作成され、上程されるとすれば、日本の将来に重大な禍根を残すことになりかねません。
私たちは、以上のように、重大な問題点を含んでいる現在の教育基本法「改正」作業に強く抗議するとともに、「改正」法案を国会に提出しないよう求めるものです。
(原文まま)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (1)
最近のコメント