肉用牛経済
<米産牛肉>来月中の日本輸入を熱望 米農務長官と言うニュースが出て「食の安全」に対して更なる不安が出ています。
ここでもBSE問題と関連して輸入肉の危険が完全に取り去られていない事実を書いてきました。
さて、今日は「肉用牛経営」について少々調べたので報告して、アメリカ産輸入肉が意味することを考えていきたいと思います。
まず、日本の肉用牛経営について述べます。
国産牛には一般に黒毛和種など和牛と言われる肉用種と、
ホルスタイン種」の去勢雄牛や老廃牛などの乳用種があります。
消費の半分は肉用種出、あとは乳用牛と輸入牛肉です。
「繁殖経営」→産地市場→「肥育経営」→家畜市場→流通業者→消費者と言う流れが一般的です。
経営は土地や種類によって多少の違いはあります。
繁殖経営では零細が多いのが現状です。
放牧用の草地が少ないため、日本では和牛子牛は舎飼が多く、そのため素牛の価格は280kgで30〜40万円です。一方アメリカでは大牧場ということで5〜10万円です。
肥育経営は、飼料との関係が大きく左右します。
ホルスタイン去勢牛雄では10ヶ月。和牛では2年くらい肥育する期間が必要なのです。
その時使われる飼料の多くはアメリカ輸入とうもろこしや大豆です。
日本人はすき焼きやしゃぶしゃぶなど「煮る」料理が好みと言うこともあって、
以前は霜降りの肉が高級とされました。
霜降り肉を作るには実は可成長期に渡り飼育が必要なのです。
と言うのも、牛は各組織の成長期間が違います。
骨、筋肉、脂肪の順で成熟するのです。
脂肪組織が形成される頃に筋肉組織が入り込んでできるのが霜降肉です。
従って期間は長くなるため飼料・諸経費もかかります。
諸々の経費を考えると最終的に一頭100万円くらい。高級和牛では数百万円に上ります。
しかし、この頃は日本でも高級志向よりも焼き肉などで食べることが多くなり赤肉が多く流通するようになってきました。
さてこうして一頭の牛が市場に流れます。
牛は鳴き声以外は全て食べることが出来ると言われていますが、
確かに無駄なく全てを加工、食料となり私たち消費者に届きます。
そこで、つい肉食は効率のよい食べ物と思いがちですが、
実は肉食は資源利用の不経済ではないかと言う指摘もあります。
1ヘクタールの土地でそれぞれの農畜産物を生産した場合、どれだけの人数を一年間養えるかという試算やタンパク質の生物学的効率などの視点からみても、
畜産物の生産性は低いのです。
世界の年間トウモロコシの生産量は約6億トン。
うち4トンが家畜用の飼料です。(世界の飢餓問題を考えると、家畜用飼料の生産ではなく、人間の食料生産の方が必要ではとも思うのですが、、、)
こうした中で世界規模の巨大アグリビジネスは、
迂回生産であるため畜産のコストを低くするため、
飼料の安全性や牛そのもの生理を無視して、利益追求にのみ走っています。
日本の食料供給率は4割。
その土地にはその土地の風土に合った「食」の材料があり、
その土地の人間もそのような体の仕組みになっています(日本人なら胃が長いとか、、、、)
それを無視して、食料の殆どを輸入に頼ることは、健康の上でも問題があります。
輸入肉再開を急いでいる政府に対して、
BSE問題も課題として突きつける必要はありますが、
日本の食を、もう一度取り戻す視点で声を上げる時期でもあろうかと思います。
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コメント
はじめまして、「わど」と申します・・・。
黒毛和牛は和牛の90%を占めるそうですが、ほかにも日本短角種牛(東北地方)、褐毛(あかげ)和種牛、無角和種牛の
3種があるそうですね。
また米国の畜産(にかぎらず農業一般)には多大な政府助成金が出ている、ともいわれてるようです・・・(汗)。
投稿: わど | 2006.05.25 21:51
わどさん。
初めまして。
コメントありがとうございました。
わどさんのURLを辿ってブログに到達。
拝見いたしました。「◆書く/読む/喋る/考える◆」。
サブタイトル、素敵でした。
言葉の仕組みを暴きだす。ふるい言葉を葬り去り、あたらしい言
葉を発見し、構成する。生涯の願いだ。
私も。私も!!!
逸る思いで読ませていただきましたよ。
そしてプロフィールの詩も良かった。
本当に流れる雲のように、たゆたいながら思いは浮かび、消え、そしてやがて夜のとばりが下りるのでしょうか???
拝見しながら、あれやこれやと楽しい想像に思いは追いつかないくらいです。
これからもその鋭い感性で書かれて下さいね。
楽しみです。
さてさて、頂いたコメントの内容についてですが、
日本の農業支援のお粗末さは先進国では他に類を見ないと思います。
畜産農家。ドンドン潰れています。
そして大型のアグリビジネスが進出。私たちの胃袋はしっかり握られています。
本当に、この先、どうなることやら、、、
いろんなことが分岐点に来ていると感じること大です。今後ともしっかり注目していきたいと思っています。
またご意見、お聞かせくださいね。たのしみです。
では、、、、また。
投稿: せとともこ | 2006.05.26 14:57
せとともこさま、こんばんは。
我が集落でもBSE騒動以前はほとんどの家に数頭の「べこ」がおりました。いわゆる「繁殖牛」です。今はだいたい止めてしまっています。
BSEフリーの「べこ」を育てられないかと試算をしてみましたが、一頭当たり1町歩程度の農地が必要になります。米ならおよそ100人が一年間必要な収量があります。
思えば随分贅沢な食べ物です。
投稿: 早雲 | 2006.05.26 20:35