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2007.02.06

怒るときと許すとき

怒るときと許すとき

 女がひとり
 頬杖をついて
 慣れない煙草をぷかぷかふかし
 油断すればぽたぽた垂れる涙を
 水道栓のように きっちり締め
 男を許すべきか 怒るべきかについて
 思いをめぐらせている
 庭のばらも焼林檎も整理箪笥も灰皿も
 今朝はみんなばらばらで糸のきれた頸飾りのようだ

 噴火して 裁いたあとというものは
 山姥のようにそくそくと寂しいので
 今度もまたたぶん許してしまうことになるだろう
 じぶんの傷あとにはまやかしの薬を
 ふんだんに塗って
 これは断じて経済の問題なんかじゃない

 女たちは長く長く許してきた
 あまりに長く許してきたので
 どこの国の女たちも鉛の兵隊しか
 生めなくなったのではないか?
 このあたりでひとつ
 男の鼻っぱしらをボイーンと殴り
 アマゾンの焚火でも囲むべきではないか?
 女のひとのやさしさは
 長く世界の潤滑油であったけれど
 それがなにを生んできたというのだろう

 女がひとり
 頬杖をついて
 慣れない煙草をぷかぷかふかし
 ちっぽけな自分の巣と
 蜂の巣をつついたような世界の間を
 行ったり来たりしながら
 怒るときと許すときのタイミングが
 うまく計れないことについて
 まったく途方にくれていた
 それを教えてくれるのは
 物わかりのいい伯母様でも
 深遠な本でも
 黴の生えた歴史でもない
 たったひとつわかっているのは
 自分でそれを発見しなければならない
 ということだった

茨木のり子・・・詩集「見えない配達夫」より
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今朝、茨木さんの「見えない配達夫」と「対話」をつらつらと見ていたら、
載っていた詩の一つが「怒るときと許すとき」。

「女たちは長く長く許してきた
 あまりに長く許してきたので
 どこの国の女たちも鉛の兵隊しか
 生めなくなったのではないか?
 このあたりでひとつ
 男の鼻っぱしらをボイーンと殴り
 アマゾンの焚火でも囲むべきではないか?
 女のひとのやさしさは
 長く世界の潤滑油であったけれど
 それがなにを生んできたというのだろう」
と、茨木さんは言うが、
長く長く許してきたのは、女たちだけか?
国民全体が、
痛みに耐え、政府の甘い言葉に騙され、
許しにゆるしてきたのではないだろうか???
そして、いつの間にか
「鉛の兵隊」しか産めなくなるのだろうか?女たちは。
そして、いつの間にか
「鉛の兵隊」として男たちは戦場に刈り出されるのだろうか???


茨木さんは最後に結ぶ。
「怒るときと許すときのタイミングが
 うまく計れないことについて
 まったく途方にくれていた
 それを教えてくれるのは
 物わかりのいい伯母様でも
 深遠な本でも
 黴の生えた歴史でもない
 たったひとつわかっているのは
 自分でそれを発見しなければならない
 ということだった」
と。
自分で発見しなければならないのか、、、
怒るときと許すときとは何か、いつかを。

もし、そうならば「今」は怒るときだと強烈に思う。

そんなことを思いながら詩を読みました。

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コメント

こころに染みる詩ですね。
つい先日、茨木のり子さんと石垣りんさんの詩集を買いました。
これから読むところなので、グッドタイミングです。^^

 自分の感受性くらい
 自分で守れ
 ばかものよ

彼女のことばは、私の人生とリンクします。

投稿: 水葉 | 2007.02.07 11:57

水葉さん。
こんにちは。
お元気ですか。
いつも拝見していますよ、水葉さんち。
なかなかにぎわっていますね。例の方たちで。
応援しているからね!

さて、石垣さんと茨木さん。
いいですね。
大好きです。
いつも私も「ばかもの」と背中をたたかれているように思いながら詩を読んでいます。
これからもお互いに励まし合って頑張っていきましょうね!
では、季節柄お子様お大切に。

投稿: せとともこ | 2007.02.08 16:26

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