そのきさらぎの望月のころ
〜〜〜願はくは花の下にて春死なむ、そのきさらぎの望月のころ〜〜
今日2月16日は西行の命日です。
西行と言えば桜。
神の木と言われ故からか桜と言えば何故か鬼。
そして、あの西行にまつわる伝説を思い出します。
鬼の法を真似て反魂の術を用い人を作るという『撰集抄』に記された逸話。
「西行於高野奥造人事」(西行高野の奥に於いて人を造る事)
伝説の中身は孤独に耐えかねた西行の話。
西行が高野山で修業していた折、同じ聖仲間と月を愛でたことがあった。
「同じく浮世をいとふ花月の情をわきまへむ友恋しく覚えしかば」ということで、鬼に習って人の骨を取り集め、人を造り上げた昔のことを思い出すというものです。
人ひとりいない荒れ野に鬼が出てきて、白骨化した死体を集めて再び人間に復元するという話を知り、西行もその術を知る。
あるとき、友を亡くしたあまりの淋しさに自分も白骨を集めて復元してみる、、、
そして出来上がったものの、それは声も聞き取りにくく顔色も悪い。
どうもつくっては見たものの心が入っていないようである。そこで高野山に置き去りにしてしまう。
そして西行は、徳大寺殿を訪れ、なんとかしてくれと懇願しようとするがあいにくの留守。
そこで次に伏見中納言を訪ねる。
西行は言う。
「広野に出て、人も見ぬ所にて、死人の骨をとり集めて、頭より足手の骨をたがへでつゞけ置きて、砒霜と云薬を骨に塗り、いちごとはこべとの葉を揉みあはせて後、藤もしは糸なんどにて骨をかゝげて、水にてたび/\洗ひ侍りて頭とて髪の生ゆべき所にはさいかいの葉とむくげの葉を灰に焼きてつけ侍り。土のうへに畳をしきて、かの骨を伏せて、おもく風もすかぬやうにしたゝめて、27日置いて後、その所に行きて、沈と香とを焚きて、反魂の秘術を行ひ侍り」
聞いた伏見中納言は西行に反魂の術を教えるが、それを聞いているうちに西行は、自分の愚かさに気がつく。
また恥じ入りながら、決意する。
自分は「花鳥の友」を求めるかわりに「花鳥の情」を求める鬼になろうと、、、
(せと要約ゆえ詳しくは撰集抄をごらんください)
この話はなんとも怪しげで儚くて、そして甘美でさえあります。
高野山で孤独と闘いながら咆哮する西行。
友を得んとするなら自らが鬼と化す。
荒れ野をさまよう西行の鬼気さまる姿が想像されます。
西行を照らす月は青かっただろうか、白く光っていたのだろうか?
さらに、みずからが作った物への畏れと戦き。
自らに対する撞着。
そして西行は歌人としてまさに鬼神になる。
なんだか出来すぎたこの話。
実はすごく好きです。
〜〜春風の花を散らすと見る夢は さめても胸のさわぐなりけり〜〜
西行は花が好きで月を愛していました。
花の中でも桜がとりわけ好きで、桜の歌が230首、次の松が34首、さらに梅が25首だそうです。
花が咲く頃、西行は浮かれる。
〜〜おぼつかな春は心の花にのみいずれの年にか浮かれ初めけん〜〜
毎年咲く花であると知りながら、浮だつ心はいつも初めてのようであり、
花を待ち望む我が心を押さえながら待っている様子がなんだか可憐でさえあります。
そして西行の散るものへの哀惜を謳っている歌が心に染み入ります。
〜〜風に散る花の行方は知らねども 惜しむ心は身にとまりけり〜〜
〜〜散る花を惜しむ心やとどまりて 又来む春の誰になるべき〜〜
願い通り、きさらぎの望月
西行は死にました。
大往生、見事な死に様だったと後に伝わりました。
享年73歳。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。


コメント
西行と聞いて思い出しました。
大阪府の富田林市にいる義姉さんが、私たち夫婦で訪ねたとき、西行がたどり着いた地、即ち亡くなった地として、お墓とお寺のある名所へ案内してくれました。
お寺の名前を忘れたのでネットで検索して見ましたが、お墓の宣伝ばかりで解りませんでした。多分、市内の端の方で、千早赤阪村の近くだったと記憶しています。
余り大きな寺ではなかったように思います。しかし、記念館などもあって、西行の人柄が偲ばれました。
投稿: hitoriyogari | 2007.02.16 16:26