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2007.08.06

二〇〇七年版 労働経済白書

厚生労働省は二〇〇七年版「労働経済白書」を発表しました。
テレビでも「あなたは働きすぎですか?」というタイトルで町ゆく人々の声を取りあげていました。

白書の中身をみてみましょう。
1980年代には労働生産性が2・8%上昇し、そのうち1・6%が実質賃金の上昇に、0・2%が労働時間の削減分に使われたと分析。
1980年代には労働生産性上昇1・4%分が実質賃金上昇に0・2%、労働時間削減に1・1%使われる。
2000年代には労働生産性が1・7%上昇したのに、その上昇分のうち、実質賃金ではマイナス0・1%となり、労働時間の削減分で0・1%が使われたにすぎない。

毎日新聞では以下のようにこのニュースを紹介。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
仕事と生活の調和を図るワークライフバランス(WB)と雇用システムを分析のテーマとして、「労働者への(成果)分配を強化することが大切」と異例の提言を盛り込んだ。経営者側には耳の痛い内容になり、好景気の実感が薄いとされる中、注目を集めそうだ。
中略
若年者は非正規の不安定雇用で結婚をためらう層と長時間労働で異性に巡り合う機会がない層とに二極化していると指摘。少子化対策には「正規雇用を拡大し若者の自立を促し、働き過ぎの是正に取り組むことが求められる」と主張している。
 厚労省は「分配は労使関係のことでもあり、これまで口を挟んでこなかった。白書をきっかけに労使の真剣な議論に期待したい」と話している。
(上記ニュースより)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

現政権は、“格差を固定化しないためにも経済成長が必要”などとこれまでは格差を是正せずに経済成長、経済成長と太鼓を叩いていましたが、現実には、たとえ経済成長してもその成果が労働者に分配されていないことを政府が認めたということです。

景気の回復期間が戦後最長とされ、企業の売上高経常利益率がバブル期のピークをも超えるもとで、労働者の賃金が抑制され、「成長のために痛みを」と庶民に痛みのみを押しつけてきた小泉さんから安倍さんの政権。
一方、株主への配当、役員賞与と内部留保は急増。
結局いつも言われるように二極化がますます進んでいる構造を白書で数字的に見ることができたというものです。
貧困と格差の問題。
この問題を考えるにあたり何を重点的に据えることが大切か、と問われれば「利益の分担の公平性」ではと思います。
成果・利益を労働者にも応分に分けること、
そのために企業は何をすべきか、政府は何を守らせればいいか、、、
こうした事柄の一つ一つを丁寧に討論・議論すべきではと考えます。
格差は何も「金くれ〜〜〜」願望が生み出す妄想ではなく、厳然と社会に横たわっている事実です。
現実を見、分析し、評価していく中で、その底流に潜む本質が明らかになることはままあります。
レーニンは哲学ノートで次のように言います。
「泡は上に浮き、深き流れは下に。だが泡と言えども本質の一つである」と。
様々な現象、一つ一つの事柄から本質を抽出することは容易ではありません。
特に今、ここで話題にしている格差や貧困は一人として同じ境遇ではないと思います。
だからこそこの問題を見据える視点は階層内の「差」とするべきではなく「階級問題」として考えていくことが大切ではと思うのです。
この問題、今後も考えていきます。
なお、このところ内田さんの「格差社会って何だろう」というエントリーが方々で話題になりました。これに関してはブログ仲間のわどさんのエントリーが実に優れていますので、紹介しておきます。
内田樹先生の過去ログを拝読しつづける(15)

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コメント

こんにちは。うちのPCでは白書は見難くて・・。データしりたいですけど・・。
福祉削減非正規雇用で経済成長しても、本当に企業家のモラルで(市場にまかせておいて)分配されるのか不安です。

投稿: あゆ | 2007.08.07 10:45

せとさん。今晩は。

>現実を見、分析し、評価していく中で、その底流に潜む本質が明らかになることはままあります。

本日も興味深く読ませていただきました。ハット気付かされました。 利益の本質とは? 利益とは、何か? 利益は、誰が、何処で、どのようにして生み出すのか?好奇心が湧き上がって来ます。 この辺に現代の経済システムを解明するための秘密が潜んでいるように思われて来ました。 主権者の端くれとして、これぐらいの解明には責任を持たなくてはと自戒しております。 学ぶことは楽しいですね。


投稿: hamham | 2007.08.07 18:57

なんか、おれんちのCMがあったりして恐縮しています。ありがとうございます。
参院選の直前になって、格差是正(@だいたいの野党側マニフェスト)って考えはダメだ、みたいな記事だったので「先生、ちょっとそこどうよ?」って感じの批判をしたのです。ジブリ『熱風』に書かれたという「貧乏論」は、すごく納得できたのですけど。
瀬戸先生も言及されていますが、「社会格差」ひとつをとりあげるにしたって複雑な問題ですよね!! アッチをこうするとソッチがああなる、みたいな巨大な関係の中にあるんじゃないでしょうか。高度に発達した社会ってことでしょうか。

ところで参院選の話題に戻ります。やっぱり未来に影響を持つものだったようですね。厚生労働省の白書以外にも、首相の広島発言とか、内閣府が低所得者を支援する「負の所得税」を提唱したりとか、選挙前の雰囲気とぜんぜん違ってきています。

投稿: わど | 2007.08.07 19:04

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