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2007.08.11

時代と憲法9条

日本国憲法
国民主権と基本的人権の尊重と平和を謳った憲法。
私はこの憲法を誇りに思っています。
だがしかし、この憲法を変えよう、変えようと考えている人がいるのも事実です。
成立当時から改正の論議の俎上に乗せられて来た憲法です。
何故?
どうして?
と言う思いが湧いてきます。
その理由は時々の状況によって様々です。
今日は日本を取り巻く情勢と改憲の理由の変遷を見ていきます。
時のカレンダーの順番により以下の流れで論を進めていきます。
1旧安保条約
2現安保条約
3ガイドラインと有事立法
4湾岸戦争と国連→PKO協力法→周辺事態法→テロ特措法→イラク特措法
5安倍内閣登場→集団自衛権→美しい国


1旧安保条約
安保条約締結でアメリカは小規模でも再軍備開始を日本に迫りました。
これに答え「ゆっくりやる」というのが当時の政府の見解でした。
1951年の旧安保条約と54年の自衛隊の創設は憲法9条の「一切の軍備を持たない」ことと齟齬することは当然でした。
そこで時の政府は「極東における国際平和と安全」のためと「外部からの攻撃に対する日本国の安全」に寄与するという解釈に立ちました。
1954年12月22日衆議院予算委員会大村清一防衛庁長官が述べたように「独立国としての自衛権」と言う解釈は今でも続いています。

2現安保条約
1960年に成立した現安保条約はさらに日米軍事同盟にひた走るものでした。
背景としては59年の砂川事件や沖縄基地反対闘争に手を焼いていたアメリカに対して「片務性の解消」と「対等の同盟化」を岸内閣は迫りました。
5条で米軍の日本防衛義務が明確になりました。
憲法との関わりで当時の赤城宗徳防衛庁長官は「共同防衛の際は集団的自衛権ではなく個別的自衛権を発動」と答弁。

3ガイドラインと有事立法
背景はベトナム戦争によるアメリカの通貨危機と日本の高度成長期があります。
同盟国に軍事負担を迫ることになんら躊躇しないアメリカは日本に露骨に軍事費分担増額苦を要求してきます。
「武力攻撃がなされる虞」がある場合と解釈をさらに拡大させて安保条約5条の枠を逸脱。日米軍事同盟の性格はさらに色濃くなっていきます。


4湾岸戦争と国連→PKO協力法→周辺事態法→テロ特措法→イラク特措法
1991年、イラクによるクウェート侵略に対してアメリカ主導で「多国籍軍」による武力行使が行われました。
当時自民党幹事長の小沢一郎氏は、自衛隊を国連に提供して海外で活動させることは合憲と主張。その理由は「国連の指揮に基づいて活動することは国権の発動でなく憲法前文の理念を実践すること」と述べました。
そして「国際安全保障」の重視を再度述べPKOへの協力、国連軍への参加、多国籍軍への協力を説きました。
1992年のPKO協力法では「武力行使」と「武器使用」の区別論や自衛隊の活動が外国軍隊と「一体化」か否か論が盛んに行われました。
1999年の周辺事態法ではアメリカの日本への後方支援強化がますます明らかになりました。
背景はさらなる市場を求めたアメリカは「ならず者国家」と名指しして新しい脅威となる国を指定。その延長で日本に対してアジアでの軍事行動に対する効果的案支援を約束させました。この法律は「アメリカが武力紛争の当事者になっている場合、あるいは仕掛けた場合でも」排除しないというものでした。
アメリカに対して補給・輸送・修理・整備・医療・通信・空港・港湾業務・基地業務を提供。しかも民間まで巻き込んで行わせるというものです。

そして2001年のテロ特措法では我が国の周辺さえとっぱらって自衛隊が米軍支援に行くことになりました。
2003年イラク特措法では「人道復興支援活動」と銘うたれて自衛隊は戦闘地域へ派遣されることとなりました。


5安倍内閣登場→集団自衛権→美しい国
カレンダーはついに現代、安倍内閣へとやってきました。
安倍さんの特徴は「憲法改正」です。
集団自衛権にとりわけ固執している安倍内閣の主張は「国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力行使を、自国が直接攻撃されていないにも関わらず実力を持って阻止する権利」と述べた1981年の稲葉誠一答弁」がその後の政府統一見解とされたことです。
2000年の第一次、2007年の第二次アーミテージ報告のアメリカからの圧力などを受け憲法を変えようと躍起の安倍内閣です。

むきだしの軍事同盟化、国民の納得を得ないままの相次ぐ強硬採決は、参議院選挙での大敗、草の根運動「9条の会」の根強く幅広い運動など国民の平和を守る、望む声に今、大きく阻まれています。
しかし、アメリカを背景に改憲勢力は今後ますます私たち国民におおいかぶさってくるものとも思われます。
そもそもの憲法9条から逸脱して牽強付会、おもうままに憲法を解釈してきて自衛隊を軍隊と化し、海外にまで派遣するようにしてきた時の権力者に「ノー」の声を上げ続けることの大切さを思う者です。

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