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2008.11.07

高村光太郎と智恵子

今日は
いよいよ冬です。
冬と言えば思い出すのは高村光太郎。

茨木のり子さんの本を以前、読んで、
改めて光太郎と智恵子の美しく儚く、そして凄まじい夫婦愛を思った事があります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あの頃

人を信ずることは人を救ふ。
かなり不良性のあつたわたくしを
智恵子は頭から信じてかかつた。
いきなり内懐(うちふところ)に飛びこまれて
わたくしは自分の不良性を失つた。
わたくし自身も知らない何ものかが
こんな自分の中にあることを知らされて
わたくしはたじろいだ。
少しめんくらつて立ちなほり、
智恵子のまじめな純粋な
息をもつかない肉薄に
或日はつと気がついた。
わたくしの眼から珍しい涙がながれ、
わたくしはあらためて智恵子に向つた。
智恵子はにこやかにわたくしを迎へ、
その清浄な甘い香りでわたくしを包んだ。
わたくしはその甘美に酔つて一切を忘れた。
わたくしの猛獣性をさへ物ともしない
この天の族なる一女性の不可思議力に
無頼のわたくしは初めて自己の位置を知つた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

光太郎と智恵子。
詩人茨城のり子は,時代に翻弄されながら揺れ動いた夫婦を、
冷徹に、そして限りない敬愛をこめて描いています。
戦争賛美に走った光太郎の思いを描き、
戦後、自分を責めにせめた詩人の姿を書き、
心の底にも表面にも、襞にも、あらゆるところに智恵子が生きずいている彫刻家であり詩人の光太郎を、
羨望で表しました。
私も、この本を何度も読みながら、
あの阿武隈川や安達太良山に思いをはせたものです。

心の深い、ふかいところで結ばれた、こんな夫婦があったことは、
本当に嬉しい限りです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜元素智恵子

智恵子はすでに元素にかへつた。
わたくしは心霊独存の理を信じない。
智恵子はしかも実存する。
智恵子はわたくしの肉に居る。
智恵子はわたくしに密着し、
わたくしの細胞に燐火を燃やし、
わたくしと戯れ、
わたくしをたたき、
わたくしを老いぼれの餌食(ゑじき)にさせない。
精神とは肉体の別の名だ。
わたくしの肉に居る智恵子は、
そのままわたくしの精神の極北。
智恵子はこよなき審判者であり、
うちに智恵子の睡る時わたくしは過(あやま)ち、
耳に智恵子の声をきく時わたくしは正しい。
智恵子はただ々(きき)としてとびはね、
わたくしの全存在をかけめぐる。
元素智恵子は今でもなほ
わたくしの肉に居てわたくしに笑ふ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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コメント

せとさん。今晩は。
何たる奇遇。先月高村光太郎が疎開していた岩手県の山里を通りました。何やら自然や、風景に高村光太郎の息吹を感じて来たばかりです。
本日のこの立派なページを読ませていただきまして更に光太郎・智恵子、「智恵子抄」などの理解を深め、感得の世界を広めることが出来ました。
お蔭様で下記のような、光太郎の遺作も見れるblogページを見つけることが出来ました。
http://aokisekkei.exblog.jp/9570931/

投稿: hamham | 2008.11.07 21:34

hamhamさん。
こんにちは。
いつもお返事、遅くなりごめんね。
週末は家事がたまり、アレコレと慌ただしくてユックリとネットの前に座れないのです、、、


さて、
そうですか、、、
光太郎の小屋、行かれたのですか???
うらやましい。
私も機会があれば是非、その息づかいを感じてきたいなと思っています。

ところで、筑紫さん、亡くなられましたね。
いつもhamhamさんが言われる警世の木鐸を思い出し、今日、記事にちょっと書かせていただきました。
お時間があればご覧下さい。
宜しくお願いいたします。
では、、、またね。

投稿: せとともこ | 2008.11.10 10:30

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