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2009.01.23

知的財産立国政策は大学に何をもたらしたか?

先に書いた「日本にノーベル賞が来た理由」の中にある「知財化」について、私自身も、現実にどのように大学の環境に組み込まれているかを、今、調べています。
と、言うことで、このエントリーは自分の覚え書き、メモと言う形で進めていきます。

まず、知的財産基本法について。
これは、2002年の当時の小泉総理の施政方針に基づきます。
〜〜〜〜〜世界最高水準の「科学技術創造立国」の実現に向け、人の遺伝子情報の医療への応用、極めて微小なレベルでの新材料開発など、最先端の戦略的研究分野に重点的に取り組みます。併せて、産学官の連携の推進、地域における科学技術の振興を図ってまいります。 〜〜〜〜〜
さらに続けて、
〜〜〜〜〜我が国は、既に、特許権など世界有数の知的財産を有しています。研究活動や創造活動の成果を、知的財産として、戦略的に保護・活用し、我が国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とします。このため、知的財産戦略会議を立ち上げ、必要な政策を強力に推進します。 〜〜〜〜〜〜


ここに、こうして「知的財産立国」宣言がなされたのです。
その後の取り組みは、知的財産戦略推進事務局のホームページにあるとおりです。
「2002年11月に知的財産戦略大綱を受けて知的財産基本法が制定され、2003年3月からは、同法に基づき、内閣に知的財産戦略本部(戦略本部)が設置されました。さらに、戦略本部は7月に知財立国に向けた具体的施策を取りまとめた「知的財産の創造・保護及び活用に関する推進計画」(推進計画)を決定しました。 (上記サイトより)」

ここまでは、なんの問題もないように見えます。
また先に書いた「ノーベル賞が来た理由」の著者も知財化、知財の保護が大切であることを訴えていました。
確かに知財は大切です。
保護されるべきです。
では、どうして大切で保護されるべきかと言われるなら、
知は全ての人々の共有の財産であると言う意味だからです。
一部の人々のためにだけあるものではありません。
一部の人々にだけ利益を還元するものではありません。
全ての人々が、その知から導かれる結果を享受できるから、守られるべきものなのです。
が、
が、
この知財に対して、経済界が小泉さんの先に提言をしていました。
「知的財産立国宣言」の背景と経緯などをご覧ください。
この中の第7節に「2002 年 1 月には経団連が「知的財産権を核にした 産業競争力の強化に関する考え方について」という提 言を行なった。 」として詳しく書かれています。

この報告を読むと、結局「知財」は産業界、財界の肝煎りで推進されたものであると分かります。

それでも、知は財であると言う方針の元で大学環境が整備され保障されたのなら、是と言うことができます。
では、その後の大学はどうだったでしょうか?
文部科学省の「大学知的財産本部」を見てみましょう。
「2.審査方法の概要
( 申請状況)
申請件数:83件」
とあるようにまずは83件の申請がありました。
そして、
「( 審査機関)
科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会 産学官連携推進委員会の下に置かれた「大学知的財産本部審査小委員会」
( 審査手順)
1 文部科学省において、要綱等を作成の上、募集。
2 大学知的財産本部審査小委員会において、書類審査及びヒアリング審査等を経て採択。
3 今後は、文部科学省において採択された機関と個々に委託契約を締結し、事業実施。」
と言う手順で、
「大学知的財産本部整備事業」採択機関:34件
「特色ある知的財産管理・活用機能支援プログラム」対象機関:9件
となりました。
こうして「産官学」が進み、ベンチャー発信の拠点になる大学も登場したりと、知財の活用適用に拍車がかかりました。
その間、大学自身の環境も激変。
まずは2003年の国立大学法人化。
2006年の新教育基本法、
2008年の新学校教育法などなどです。
そして「イノベーション」。
これに関しては以前イノベーション教育その後と言うエントリーを挙げて、実態を調べました。
その時も書いたようにイノベーションの後ろに見え隠れするのは「財界の意向」であるということです。

「オープンイノベーション」の元、大学に「成果」の特許を求め、製品としての価値を強め、そこから利益を誘導していくような方針が、確立されようとしているのです、、、
一方で基礎研究は隅においやられていく、、、、
私学助成はドンドン削減されていく、、、、
大学は財界の人材養成機関に成り下がろうとしてるのか???と思うくらい、
今、大学の環境は劣悪です。
そもそも大学は知を生むところ、育てるところです。
それは長い時間がかかりますが、社会全体の財産であるゆえに社会全体で守り育ててきたものです。
利益を優先の研究や成果を追い続ける研究は、いずれ底をつきます。

今、もう一度「大学のありかた」「研究の保護」「知を守ること」を真剣に考える時期がきていると改めて思いました。
これからも、折に触れ記事にしていきます。

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