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2009.08.16

もし それが わたしだったら

茨木のり子より

疎開児童

疎開児童も お爺さんになりました
疎開児童も お婆さんになりました

信じられない時の迅さ
飢えて 痩せて 健気だった子らが

乱世を生き抜くのに せいいっぱいで
生んだ子らに躾をかけるのを忘れたか

野放図に放埒に育った二代目は
躾糸の意味さえ解さずにやすやすと三代目を生み かくて

女の孫は 清純の美をかなぐり捨て 踏み抜き
男の孫は 背をまるめゴリラのように歩いている

佳きものへの復元力がないならば
それは精神文化とも呼べず

もし 在るのなら
今どのあたりで寝ぼうけているのだろう

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


木の実

高い梢に
青い大きな果実が ひとつ
現地の若者は するする登り
手を伸ばそうとして転り落ちた
木の実と見えたのは
苔むした一個の髑髏である

ミンダナオ島
二十六年の歳月
ジャングルのちっぽけな木の枝は
戦死した日本兵のどくろを
はずみで ちょい引掛けて
それが眼窩であったか 鼻孔であったかはしらず
若く逞しい一本の木に
ぐんぐん成長していったのだ

生前
この頭を
かけがえなく いとおしいものとして
掻抱いた女が きっと居たに違いない

小さなこめかみのひよめきを
じっと視ていたのはどんな母
この髪に指をからませて
やさしく引き寄せたのは どんな女(ひと)
もし それが わたしだったら……

絶句して そのまま一年の歳月は流れた
ふたたび草稿をとり出して
嵌めるべき終行 見出せず
さらに幾年かが 逝く

もし それが わたしだったら
に続く一行を 遂にに立たせられないまま

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

昨日は終戦記念日です。
各地でそれぞれの思いの方が集まり、集会がありました。
また例によって今年も靖国参拝がニュースの俎上にのぼりました。
個人的には靖国神社の存在には疑問を持ち、今なお考えている私です。

戦争そのものは濁流であることを認めた東條由布子さんについて書き、
小泉さんの靖国参拝についてエントリーを挙げ、
映画「靖国 YASUKUNI」で活躍した稲田前議員についても考え、意見を書きました。
あの折は最後に以下のように結びました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
稲田さんのお知らせの冒頭はありがたい。
「表現の自由、言論の自由が保障されているわが国で、どのような政治的、宗教的宣伝意図のある映画を制作し公開しようと自由である。日本は政治的圧力により映画の上映を禁止し、書物を発禁にするような非民主主義国家ではない。」
含蓄のある言葉です!!!

さてさて、
表現や言論の自由とは何か???
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
稲田さんご自身が自ら放ったこの言葉に、どれほどの価値を見いだし、国民である私たちに言論の自由を保障したのだろうか????
思わず首をかしげながら、今一度、この言葉そのものの意味を思うのです、、、、、

またアメリカは安倍さんをどの様に見ると言う記事を書いたときは、外交問題としての靖国の立場を書きました。
いずれにしても、デリケートな問題です。
が、
庶民の感覚として迎える終戦記念日は、上に挙げた茨木のり子さんの詩2篇が、端的に表わしているのでは、と思います。

「もし それが わたしだったら
に続く一行を 遂にに立たせられないまま」
と。

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