景気ってなに?かを考えます その2
景気ってなに?かを考えます その1より続いて。
では、引き続き松尾さんの論文の検討です。
第4回 長い目で見るときの成長論議(2)と言うことで経済を長い目で見ていきましょう。
まず小泉さんのIT革命アメリカに続け政策について言及。
小泉さんが総理だった時期の経済全体の生産性の伸びをTFP(total factor productivity; 総要素生産性)と呼ばれる指標の成長率でみています。
これによると、1990年代において、日本がアメリカよりTFP成長が劣っていたとは必ずしも言えないと言うこと。
1995年あありからの技術革新も視野にいれ、
論理は「生産性の上昇率を上げるという目標自体、どの程度まで必要なことだったのでしょうか。」と次に続きます。
【生産性の上昇率を上げなければならない理由はあるか】
著者は国際競争力や完全雇用云々と言われている理由については、縷々反論を加え、
唯一、合理的な説明は少子高齢化で働き手の人口が減る中で、一人の人が受け取る消費財などの量を減らさずに、どうやって医療や福祉にこれから必要になる人手を確保することができるのか、それに対処するためだと述べます。
その理由は以下の通り。
「すなわち、消費財などの生産性が上がって、これに従事する労働者が減った分を福祉や医療に回せばいい。あるいは輸出品の生産性が上がれば、その見返りとして今までよりも多く消費財を輸入できるので、その分、福祉や医療に労働者を回すことができる。こういうわけです。 (松尾さんの論文より)」
そして、著者は、こうした合理的理由、課題のために本当に生産性の上昇が必要かを計算していきます。
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2007年時点で、一世帯当たりの消費支出額のうち、介護・医療サービス以外の消費(以下ではこれを「一般消費」と書くことにしましょう)にあてられる割合を計算すると、97.28%でしたi。これを、同じ年の日本経済全体の家計最終消費支出iiにかけて、薬剤費の保険負担分iiiを加えたものを、日本経済全体での一般消費財支出額と考えます。これは、285.42兆円ありました。
(中略)
上で出した一般消費財支出額の、名目国内純生産ivに占める割合を出すと、69.9%になりました。2007年の就業者数は6412万人vでしたが、この人たち全体が名目国内純生産を生み出しているのですから、この6412万人に今の69.9%をかけたものを、一般消費財生産のための労働量とみなします。これは4481.8万人と計算されましたvi。
こうして出た人数を同じ年の総人口viiで割ると、35.08%という比率が出ました。現在の消費水準を享受するためには、人口一人当たり0.35人が直接間接に一般消費財生産に従事しなければならないということです。生産性が変わらなければ、この比率は一定です。
(松尾さんの論文より)
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そして21年後にはどうか。
試算では「2138.3万人が一般消費財生産以外に従事できる」そうです。
試算から概算として「労働生産性の上昇率を、2007年から2030年までの23年間で平均すると、年0.64%」と言う数字を捻出。
そして次の公式へと論理は進みます。
「労働生産性の上昇率=TFP上昇率+資本分配率×(機械や工場等の増加率−労働投入の増加率) 」。
この計算でTFP成長率をみると、すでに日本の経済は十分成長していた、なにも小泉さんは「力む」必要はなかったと松尾さんは述べます。
そして、
いよいよ話は本丸へといきます。
その3へ続く。
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