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2010.08.10

幻想の抑止力を読んで その2

先に書いた記事からさらに幻想の抑止力は「第3章:沖縄の海兵隊は抑止力なのか」へと続きます。

私もこの問題が出た時は抑止力とは???と言うタイトルで記事を挙げました。
その時は勿論、著者の松竹さんのブログを参考にしたことは言うまでもありません。

では、本編を紹介しながら問題の本質を探っていきたいと思います。

著者は第三章でズバリ「沖縄の海兵隊は日本を守ると言う意味で私たちが考えているような抑止力にはならない」と述べます。
なぜなら、
海兵隊は「殴り込み部隊」であるというその性格からして、上陸して戦うことに意義があるのであって、そもそも基地がある地を防衛するような位置づけにはなく、またその機能も持ち合わせていないと松竹さんは述べます(なお、海兵隊の性格については第二章の殴り込み部隊であるという章に詳細に分析が掲載されているので、興味のある方は是非ご覧ください)。

「沖縄にいる限り、日本の防衛には役に立たない」「日本の防衛の役割は遂行できない」というのです。
実際、アメリカははばかることなく明言しています。
「沖縄の海兵隊は日本の防衛にはあてられない」(ワインバーガー国防長官1982年)。
そしてこれは実に日本の政府サイドも同様の認識を持っていると言うことです。
つまりアメリカは日本を守ってはくれない。と言うことを認めている。
にもかかわらず、国民の多くは「アメリカの基地があるから日本は大丈夫」と思っている。
その根拠は米兵が基地にいるから。
だがしかし、実際は米兵は基地には一年の半分しかいないとも言う。
では、どこが、なにが抑止力になるのだろうか???

ここで抑止力は本来の意味から逸脱、迷路へと入り込み、さらに迷路を抜けた時は、
アメリカの前線基地と化す沖縄精鋭部隊の「保障」という役割に様変わりして実態を著者は詳らかに説明します。
ベトナムであり、イラクであり、アフガニスタンであったりと米兵は沖縄から飛び立ったのです。
それはつまりアメリカにとって沖縄と言う「地の利」がある基地はまこと便利であるからです。
そこで著者はさらに考察を深めます。
と、言うのもこうした主張をすると必ずと言っていいほど、次の質問が飛んでくるからです。
「北朝鮮はどうなんだ」「中国はどうなんだ」と。
なるほど、確かに北朝鮮はこの間、かなり危険な行動を実行してきました。
しかし、決定的なダメージを日本に与えないのはアメリカ兵が駐留しているからである。というソレです。
筆者の松竹さんは「それがそうであれば抑止力は効いている」と認めます。
なるほど、抑止力とは相手の攻撃をしようとする意志を攻撃前に押さえ込むことにこそ、その真骨頂があるのだから。

ゆえに松竹さんは「すべての抑止力を否定するものではない」とまず自らの立ち位置を明らかにしたあと、
次にさらなる疑問を提示します。
「だがしかし、このような事態を想定する時海兵隊が沖縄にいることがベストなのか?」
また「沖縄では現実に米軍による犯罪で度重なる犠牲が相次いでいるが、それは本末転倒ではないだろうか?」と言う素朴な疑問です。
その疑問に端を発して、
「抑止が効かなくなった場合」はどうなるのか?
つまり際限のない抑止論が登場することで「恐怖の均衡」がアジアに出現するのではないか?
これらの想定に逐一納得のできる解答がない限り、
やはり私たちは「抑止力」つまり「軍事力の一部」である「抑止力」に平和と安全を任すことはできないと著者は述べます。
では打開策として現状で考えられるものは「話しあい」の義務化。
それは集団安全保障をも内包しているのだが。
軍事同盟に代わるものとして国連での安全保障理事会などの実効的な役割見直しなどなどに努力することが一番の「抑止力」ではないだろうか、、、と筆者は結びます。


と、言うことで松竹さんの「幻想の抑止力」。
迫力がありました。
まず言葉の定義からはじまり、
現実に抑止力が必要とされる場面で、何が行われているかを歴史にたずね、
事実にすりあわせ、
そして国際状況に焦点をあわせて分析。
とてもよくわかりました。

先に書いた私のエントリーでは内田樹さんの記事も紹介しました。
ここに改めて再掲載します。
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さてさて、ここまで卑屈な政府について内田樹さんはエントリーで次のように書かれています。
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日本はアメリカに対して反抗できないという「属国」条件を日本の軍事専門家たちが「定数」にして、そのコメントを述べていることはわかる。
彼らのその現状認識が十分にリアリスティックなものであることを私は喜んで認める。
けれども、その場合には、やはりコメントをするたびごとに「われわれはアメリカの軍事的属国民であり、軍事に関しては、アメリカの意思に反する政策決定をすることができないのだ」ということを明らかにし、「だから」という接続詞のあとに、自説を展開していただきたいと思う。
あたかも主権国家が合理的な判断として国内に外国軍基地を置くという「選択している」かのように語るのはフェアではないと私は思う。
(内田さんのエントリーより)
==============

またこの記事では松竹さんのブログの文章で結んだのですが、
今、こうして読むとますますその説得力に頷くものです。

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私は、抑止力論というのは、相手国を先制攻撃することによって目的を達成するという建前をとっていない点において、全てを否定的に見てはいない。だが一方、相手国の攻撃を思いとどまらせるということを、抑止力という考え方だけから構築すると、とんでもない結果になりかねない。よくよく研究が必要である。
(松竹さんのブログより)
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本当によくよく研究する必要があります。
言葉だけが徘徊し、本質が見えなくなりつつあるのでは、、、と言う危惧を感じながら、、、


なお日米同盟の本質については過去何度もなんどもエントリーを挙げていますが、
日米同盟さらに再考としてシリーズで掲載していますので、またお時間がありましたらご覧頂けると嬉しく思うものです。


松竹さんの著書を読みながら改めて鳩山さん、菅さんがいうところの「抑止力のウソ」を思いました。
この問題、さらにさらに考えていきたいものです。

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コメント

こんにちは。
どうも、深く読み込んで頂いて、感謝しております。
近く、増刷になりそうで、ホッとしている感じかな。
この秋、関連して、
沖縄県知事候補になるであろう伊波さんの本、
『普天間基地はあなたの隣にある。だから一緒になくしたい。』と、
海兵隊は沖縄にいらないという問題を防衛省関係者が証言する本、
『抑止力を問う 防衛省元高官と防衛研究所OB達の対話』
を出版します。
本をつくることで政治を動かせるのか、
大それた試みですが、挑戦したいと思います。

投稿: 松竹伸幸 | 2010.08.11 10:22

松竹さん。
こんにちは。

幻想の抑止力、一気に読みました。
この言葉が、いかに独り歩きをし、
その歩くさきざきで如何に幻想を振りまいているか、、、
そしてその裏には「ある強烈な意志」がはたらいて威いるように思えてなりませんでした。
自分自身の生半可な理解を一つひとつ丁寧に解きほぐして頂き、本当に勉強になりました。
ありがとうございました。

なお、次回作はまたまた意欲的なものですね。
楽しみです♪


松竹さんの「筆の力」を発揮する活躍奮闘の場、まだまだありますね。
今後のご活躍心からお祈りしています。
なおお体はくれぐれもご自愛を。

投稿: せとともこ | 2010.08.11 17:25

なるほど、こういう考察もあるんですねえ。
ふと思うんですが、社民党的な軍事抑制的価値観での安保・沖縄でなく
右翼(右翼思考とはちょいちがう)ではどうみるんでしょう?

「わが民族の屈辱・わが民族をみくだす米軍・しんせいなる我が国に居座る異国の軍隊」なんておもっている価値観の人です。
こういう視点でいいものまだみてません。

投稿: あゆ | 2010.08.12 09:45

あゆさん。
こんにちは。
相変わらず鋭い視点でのコメント、ありがとうございます。


なるほど。
右翼ではどのように解釈しているんでしょうね???
民族系の右翼では、やはりアメリカに対してはノーなんでしょうか???
私もあまり分からないのですが、、、

投稿: せとともこ | 2010.08.12 13:52

多分書いたように「わが民族の屈辱・わが民族をみくだす米軍・しんせいなる我が国に居座る異国の軍隊」ですから、米軍追い出して、軍隊復活でしょう。核兵器もありえるかも??

昔読んだ小説にもありました。以前書いた「レミングの群れ」と同じ作者です。
軍縮目指す人と右翼が力合わせて自衛隊や安保を廃止するというものです。
怒りをぶつける相手がいなくなり混乱というオチでした。

投稿: あゆ | 2010.08.13 21:16

あゆさん。
こんにちは。
お盆で忙しくしていましたのでお返事遅くなり失礼をしました。
あゆさんは如何お過ごしでしたか?


さて、いつもながら示唆に富むコメントありがとうございます。
なるほど、、、
敵の敵は味方というか、
あるいは共通の目的に取りあえず、、、と言うか、
そんな感じで行動を起こしても結局まとまらないってのは、
なんとなく今の民主党に同じものを感じたりしてますが、、、
ははは。
どうなんでしょう?

投稿: せとともこ | 2010.08.17 12:21

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