「帰って来たヒトラー」を観てツラツラと
「帰って来たヒトラー」を夫と観て来ました。
ちょっと長いですが、公式サイトより映画のあらすじです。
================
ギャップに笑い、まっすぐな情熱に惹かれ、
正気と狂気の一線を見失う―。
歴史上〈絶対悪〉であるヒトラーが現代に甦り、モノマネ芸人と誤解されて引っ張り出されたテレビの世界で大スターになるという大胆不敵な小説が2012年にドイツで発売。絶賛と非難の爆風をくぐり抜け、国内で200万部を売り上げた。その世界41カ国で翻訳、権威あるタイムズのベストセラーリストでも堂々NO.1に輝いた問題小説が、まさかの映画化!ドイツではディズニーの大ヒットアニメ『インサイド・ヘッド』を抑えて第1位を獲得した。
主役を演じるのは、リアリティを追求するために選ばれた無名の実力派舞台俳優。ヒトラーに扮した彼が街に飛び込み、実在の政治家や有名人、果てはネオナチと顔を合わせるというアドリブシーンを盛り込んだセンセーショナルな展開と、原作とは違う予測不能な結末は、一大ブームを巻き起こした。
1第二次世界大戦から70年が経ち、全てが変わった現代社会で、あの頃と変わらぬ思想とともに生きる男が繰り出すギャップに笑い、かつて熱狂的に支持されたままの、誰よりも愛国心に富んだまっすぐな情熱に惹かれ、正気と狂気の一線を見失っていく現代の人々の危うさ―。そうきっとスクリーンの前で笑っているあなたも。
モラルと背徳の狭間ギリギリの危険なコメディ、あなたの〈足元〉がグラつく。
(公式サイトより引用)
=================
2014年のある日、ヒトラーが甦る。初めはテレビ、あるいは映画の撮影だと思ってヒトラー役の「ものまね芸人」を笑って受け入れる。ある人は握手したり、一緒に写真を撮ったり、あるいはインタビューを受けてヒトラーの演説に「そうだそうだ、全く」と賛成したり、、と。
その中で次第に人々の心を掴んでいく過程が描かれています。
説明にもあるように主演の実力派舞台俳優オリヴァー・マスッチさんのこの映画に対して想いが述べられている記事を見つけました。
記事の中でもありましたが、ドキュメンタリー方式で道行く人々に声をかけたのだが、その好意的な反応に驚き、危険を感じたと述べています。
「外国人労働者に職を奪われている」
「アーリア人の純血を」
と、オリヴァー・マスッチさん扮するヒトラーが声をかけるとたくさんの人が賛意を表したというのです。
「選挙に出たら投票してくれるか」と尋ねたら「もちろん」と答えてくれる人もいました。。。
オリヴァー・マスッチさんは「今まで築いて来た自由とか民主主義とかが取って代わろうとしている」と危惧を表明しています。
さて私と夫の感想。
「怖い映画」でした。
笑ってなんていられません。
あまりにも現在の状況に酷似しているから。。。
2017年、1月20日、アメリカではトランプ大統領が誕生し、世界中が振り回されている昨今。
トランプさんの過激な発言に初めは「まさかあんな人が大統領になるなんて、、、」と高をくくっていました。
が、
なんと選挙が終わったらトランプさんが勝利。
アメリカ大統領になり、そしてついに就任。
選挙公約通り「メキシコに壁を」「テロ防止策として移民を受け入れない」などなど排外政策をドンドン実施しています。
その思想の背景は「アメリカファースト」であり「強いアメリカ」「アメリカ一強主義」です。
そして多くの(?)アメリカ人はそんなトランプさんの主張や実行を認め、高く評価して彼に期待をしているようです。
こうした現実を見ている私にとっては「映画は非現実でお話でフィクション」の物ではありませんでした。
まさに今、アメリカで繰り広げらている状況はヒトラーが求めていたものと酷似しているのでは、、、と思いました。
映画を観たあと、夫と感想を話し合いました。
夫は「人間は本来持っている残酷な面、排外的な部分は普段は理性やあるいは民主主義と名のつくもので蓋をかぶせているが、ちょっとその蓋を取り除いただけでそうした負の感情が出てくること、それは誰でもが持っていることで、いつだって起こりうること。何もヒトラーという特別の人間が必要なのではなく、次々とヒトラーが出てくることが実に怖い」と言ってました。
また「戦争と平和」とかそうしたオルタナティブの問いには人は「平和」を希求するというが、そのカテゴリーから外れた「民族主義とか排外的な思想」に今真剣に向き合う時期なのだ」とも付け加えていました。
私も賛成です。
私は心理学実験で有名なミルグラムの実験についてちょっと夫に説明したのですが、今度これを扱った映画も上映されるようですね。
「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」というタイトルです。
「人間はどこまで残酷になれるか」
と、映画の予告編は問いかけています。
社会心理学的には「状況の力」ということで、人はその状況に置かれたら善悪に限らずその状況に慣れ、受け入れていくことが述べられています。
以前「THE WAVE ウェイヴ」を観てというタイトルでブログに感想を書いたことがあります。
その時は2015年8月でまだアメリカではトランプ大統領が誕生していませんでしたが、
感想で私は以下のように書いています。
================
「まさか、そんなことが」とか「自分だけは大丈夫」とかとか。
ところが、
この考えにこそ罠があるのでは、、、と感じます。
案外、人は縛られる事、規則に雁字搦めにされること、全体主義が好き、というか安心を感じるものかもしれません。
ナチスがそうであったように。
そうして多くの宗教がマインドコントロールをするように。。。
(以前の記事より)
=================
本当にそう思います。
まさか、いまヒトラーが。
まさか、いまアイヒマンが。
そして、
自分だけは大丈夫。
自分だけは中立で公平。
なんて、
それは小さな、小さな思い込みであるのでは、、、
と、
もう一度自分を振り返りました。
映画の中でヒトラーも言いました。
「自分を選んだのは国民なのだ」と。
この映画、
ぜひ多くの方に観ていただけたらと強く思いながら、
感想を縷々書きました。
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)
最近のコメント