イラクの女性は今?と言う先日のエントリーにコメントを頂いています。
あゆさん。
罵愚さん。
積分定数さん。
よさん。
ありがとうございます。
本来ならばコメント欄に書くべきですが、長くなるので此方に新しくエントリーを挙げます。
何故 私がイラク戦争は間違いだったのでは、と思うかと言う記事を書いたのは2005年3月31日。
イラク戦争が2003年3月開戦と言うことで、
二年目を迎えたときです。
イラク戦争開戦の公式理由を当時のブッシュ大統領は以下のように述べました。
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米英が主張した開戦事由は以下の通り。
イラクは大量破壊兵器の保有を過去公言し、かつ現在もその保有の可能性が世界の安保環境を脅かしている
独裁者サッダーム・フセインが国内でクルド人を弾圧するなど多くの圧政を行っている。
度重なる国連査察の妨害により、大量破壊兵器の廃棄確認が困難である
度重なる査察妨害によって、湾岸戦争の停戦決議である国連安保理決議687が破られている
国連安保理決議1154で「この決議に対するいかなる侵害も、イラクにとって最も重大な結果をもたらすであろう」という、湾岸戦争停戦協定(上記687)破棄条件の決議、つまり最終警告がされていた。
決議1441では『最後の機会』が与えられたにもかかわらず、イラク側は査察に積極的な協力をしていない。
フセインとアルカーイダが協力関係にある可能性がある。
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さて、2003年の当時、最大の公式理由とされた「大量破壊兵器」は見つからず、
時間と共に、アメリカによる捏造と明るみに出てきたのは周知の事実です。
そもそもこの理由は戦争勃発当時から破綻していました。
イラクは国連の査察を受け入れていないと思っている人が大勢いますが、実は2003年の1月9日にはブリクス国連監視検証査察委員会委員長が大量破壊兵器の決定的証拠は見つからずと証言しているのです。また2003年3月7日にはエルバラダイ国際原子力機関事務局長がイラクのウラン購入疑惑はありえないと報告。2003年3月 15日には仏独露はイラクへの武力行使には正当な理由がないという共同声明を行っていることはすでにニュースであの時流されていました。
その後、
元財務長官のポール・オニールが「政権開始当初からイラク戦争の計画はあった」と「暴露」。
開戦時のCIA長官だったジョージ・J・テネットは「ブッシュ政権内でイラク開戦前に同国の差し迫った脅威について真剣な協議は行われなかった」と自著で証言。
さらに、ジョセフ・ウィルソン元駐ガボン大使が2003年7月6日付けのニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した記事に端を発したプレイム事件によって、ブッシュ政権がイラクの脅威に関して意図的な情報操作(フレームアップ)をしていた疑惑が濃くなっていると証言などなど、、、と続出。
ダウニング街メモも衝撃でした。
そのメモは以下のように評価されました。
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メモの核心となるのは、MI6(アメリカのCIAに相当する)のディアラブ長官による次の発言である。
──アメリカ政権の態度が明らかに変わってきた。武力行使はもはや当然だと見なされている。攻撃を正当化するために、テロリズムと大量破壊兵器を同時に[サダム政権と]結びつける。しかし、政策に合わせて情報を作り上げ、事実をねじまげているだけだ──
ブッシュ政権がイラク侵略を正当化するために、サダム政権とアルカイダの関係や大量破壊兵器の脅威を利用すること、そしてそれがすべてウソであることをイギリス政府は(そして、おそらく世界の数多くの政府も)知っていた。ストロー外相は、イラクを侵略する「理由が薄弱だ」として、次のように説明している。
──サダムは近隣諸国の脅威とはなっていないし、大量破壊兵器を開発するイラクの能力はリビア・北朝鮮・イランよりも劣る──
その上でストローは、武器査察団を受け入れるかどうか、サダムに最後通告を出すよう国連に働きかけるべきだと対策を提案し、サダムが拒絶すれば攻撃する理由となることを示唆した。つまり、国連のイラクに対する通告は、戦争を回避するためではなく、イラク侵略を正当化するために仕組まれたものだった。
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そして、その中で改めて戦争犯罪について言及しています。
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ゴールドスミス法務長官の次の証言に注目しよう。
──イラクの政権交代がいかに望ましく思えても、それだけでは軍事攻撃の法的な根拠とはならない──
イギリス人が好む乾いたユーモアだが、長官が意味したことは、ブレア首相も会議に顔をそろえた面々もよく承知していたに違いない。侵略戦争は国際法に反する。もっとも厳しく裁かれる大罪である。ニュルンベルク裁判の判決文には次のように記されている。
──戦争は本質的に邪悪なものである。その影響は、交戦国の間にだけに留まらず全世界に及ぶ。よって、侵略戦争を遂行することは、単なる国際犯罪ではなく、究極の国際犯罪となる。あらゆる犯罪を引き起こす侵略戦争は、すべての悪を内包するという点で、他の戦争犯罪と隔絶している──
これを「平和に対する犯罪」と呼び、「人道に対する犯罪」と並ぶ大罪と規定している。ニュルンベルク裁判と東京裁判で、「平和に対する犯罪」を問われた戦犯は全員が絞首刑を宣告された。
アメリカは、自国の利益のために国際法の精神を踏みにじり、国際刑事裁判所(02年4月に効力発生)の権威も認めていない。しかし、ヨーロッパの諸国は国際法を尊重している。イギリスも例外ではなかった。だがゴールドスミス卿は、不法行為を憂慮しながらも、攻撃を正当化するために何らかの法的根拠を用意する役目を引き受けている。
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と。
戦争の「大義」はそもそもなかったのです!!!
なんと言い張ろうとも。
そして肝心のブッシュさん。
イラク戦争は間違いだったと自ら認めたのは2005年12月。
だが、
イラク派兵を続行。
イラクも言うに及ばないことですが、アメリカ人にも甚大な被害が出て、
国内でも反戦活動はピークになります。
そして、ついにイラク戦争においてテロ悪化をアメリカ政府は認めました。
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米政府は26日、イラク戦争とテロの関係について分析した機密報告書「国家情報評価」(NIE)の結論部分の機密指定を解除して公開した。イラクでの紛争が「イスラム世界への米国の干渉に対する深い恨みを生み、地球規模のイスラム過激派運動への支持を拡大させた」と分析。今後5年間は、イスラム過激派が拡大を続けるだろうと予測している。
今年4月にまとめられたこの報告書の骨子は、ニューヨーク・タイムズ紙が24日に報道。野党民主党は、9・11テロから5年で米国はより安全になったというブッシュ大統領の主張と反対に、イラク開戦が脅威を悪化させたと批判していた。公開された文書は報道内容を大筋で裏付けており、ブッシュ政権への攻撃はいっそう強まりそうだ。ブッシュ氏は公開に先立つ記者会見で、「海外でこれらの殺人者を負かさなければ米本土が脅かされる」と強調。報告書はイラク開戦が過ちだったという結論に導くものではないと反論した。「自分たちで読んでみるといい。詮索(せんさく)はやめよう」と機密解除を命じたことを明らかにした。「地球規模のテロの傾向——米国にとっての影響」と題した報告書の結論部分は、「米国の対テロ努力が(国際テロ組織)アルカイダの指導部を大きく傷つけ、作戦を妨害してきた」としつつも、アルカイダやその関連グループ、独立系も含めたイスラム過激派全体は拡張しているとみている。
特に「イラクにおける『聖戦』が、新しい世代のテロ組織指導者や作戦員を生んでいる」とした上で、イスラム過激派がイラクで勝利を収めたと考えるようになれば、「より多くの戦闘員が活気づき、ほかの場所でのテロ闘争を継続するだろう」と予測した。
アルカイダが、報告書作成後に米軍作戦で殺害されたザルカウィ容疑者の組織と合流し、イラクを新たな志願者や資金集めに利用しているとも警告した。報告書は、中央情報局(CIA)など米政府の16機関の総意として、国家情報評議会(NIC)がまとめた。
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こんな事実の積み重ねをみても、いまだ「イラク戦争は間違いではない」と主張する方の言い分はなんなのか?
ブッシュさんでさえ、間違いを認めているというのに、、、
正義の戦争とか交戦権と言うこと???
以前戦争とは正義と不正義なのか?と言うエントリーを挙げて「戦争の大義名分」について考察を加えたことがあります。
まず歴史を見ました。
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まず「正義戦」正戦論の始まりは、3世紀、初期キリスト教の最高権威、教父アウグスティヌスから始まりまったそうです。
「モーゼ七書問題集」で正戦について「不正を罰するもの」と定義しました。
そして、、、
中世神学の確立とともに、トマス・アクィナスの「神学大全」では、この精神を受け、異教徒に対する戦争を「聖戦」と名を付けました」。
その定義は以下の通り。
1:君主の命令による事
2:正当な理由(不正の処罰)を持つこと
3:正しい意図に基づくものであること
その後カノン法に「正しい戦争とは不正な者への報復である」と言おう意味で「正当な権威」「正当な理由」「正義の意思」「勝利の展望」「均衡性」「最後の手段」と言う条件がそろっている場合のみ戦争の開始を承認するという原則ができあがりました。
(中略)
戦争への正義(jus ad bellum)
1正当な理由
2正当な権威
3比例性(結果として得られる善が戦争という手段の悪にまさる)
4最終手段
5成功への合理的見込み
6動機の正しさ
戦争における正義(jus in bello)
1区別の原則(戦闘員と非戦闘員を区別する)
2比例性の原則(なされた不正を正すのに必要以上の力を行使しない)
jus ad bellumよりjus in belloが関心・重大になってきます。
やがて陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約 (ハーグ陸戦法規 1907)などで戦争は合法化していきます。
しかし、
しかし、
人類は漸く戦争違法化への道を歩みだします。
それは第一次世界大戦後のパリ不戦条約。
国際連合憲章。
こうして、丸く収まるかに見えた正義の戦争論は、その後も二転三転します。
まず「侵略戦争か自衛戦争」というテーマで正しいか否かが争われました。
またマイケル・ウォルツァーの「正義と不正義の戦争」では1977年版では「戦争が地球上から消えるのは夢物語」と述べました。
が、1997年の第3版では「人道的な介入」と言う言葉で「他国での人権侵害されている人々の擁護」のための外交圧力や経済制裁もろもろを認め武力の介入も是としました。
しかし、このウォルツァーさえ、現実のイラク戦争に「正義」を当てはめる事は至難の業のようです。
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マイケル・ウォルツァーや、ハーバマース。
この戦後ドイツの代表的知識人、哲学者とされるハーバーマスは「野獣性と人間性」と題する論文で以下のように述べ物議を醸しました。
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「古典的な国際法の枠組みにおいては、これは主権国家の内政干渉、つまり介入禁止の侵害とみなされよう。(しかし)人権政策がその前提とされている場合は、この介入はたとえ武装していようとも、そしてたとえUN(国連)の委任が得られなくとも、国際共同体によって暗黙のうちに正当とみなされた平和構築のためのミッションであると理解されるべきであろう。このような西側諸国におけるコンボ紛争の理解は、(国家主体中心的な)古典的な国際法から世界市民社会のコスモポリタン的な法への途上における跳躍を意味している」
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このハーバマスさえイラク戦争は国際違反と批判したのです。
戦争の正当化をたんに国際法と合致させただけのハーバマスゆえ、正戦論がメビウスの輪であることを哲学者は知っていたのでしょう、、、
と、言うことで、
改めてイラク戦争は間違いであったと思います。
当時のフセインの独裁や、イスラエル問題、
また身近に北朝鮮などなど、、、
世界に戦争や紛争は至る所にあります。
解決を望み、願う私ですが、
その手段は決して武力、力であってはならないと思います!!!
国際社会が率先して行うことは粘り強い対話では、と考えます。
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